『明日のカルタ』 倉本美津留著


社会
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求めてないのに蘇る
 『ダウンタウンDX』、NHKEテレこども番組『シャキーン!』などを手がける放送作家、倉本美津留。彼が手がけた初の絵本は、その名の通り「かるた」だ。

 二子玉川ビエンナーレというアートイベントの企画で生まれたというこのかるた。こどもたちが大騒ぎして取り合った巨大かるたを、一冊にまとめたのが本書だそう。短く、簡単な言葉で綴られた「読み札」は、こどもたちへのメッセージが詰まっている。
 はみ出していけ、自分で考えよう、みんなと違う視点を持て、発想の転換の大切さ……。倉本さんがかるたを通して伝えたいことは、一貫している。一貫して、大まじめ。超まじめで、ストレート。直球が過ぎて、キャッチボールというよりもはやこれ、ドッジボール?な感が強いのも否めない。当たると痛い言葉たち、はたして届くのかな……。
 この本、全体的にちょっと暑苦しい。っていうかだいぶ、暑苦しい。と言いつつも、ページをめくると「コドモの頃、こんなことを親(or教師)に向かって言ったことあるわ……」なーんて、求めたはずのない失われた時が否応なくよみがえる瞬間多数。わーバカバカ、あたしのバカ!と悶えながら、倉本美津留はこの青臭さを大切にしているのかもな、と思う。
 年月を重ねると、自然と斜めに向きがちな私たちの視点。倉本美津留はほうっておくと自然と擦れる視線を、まっすぐにまっすぐにあろうと、心がけてきたのかもしれない。本書には、倉本美津留が大切にしてきたものが詰まっている。ときに胸焼けするほどに。
 (日本図書センター 1300円+税)=アリー・マントワネット
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アリー・マントワネットのプロフィル
 アリー・マントワネット 出版社でOLをしつつ、ライターとしても細々と稼働中。ファッション、アイドル、恋愛観など、女性にまつわる話題に興味あり。尊敬する人物は清水ミチコ。趣味はダイエット、特技はリバウンド。
(共同通信)

『明日のカルタ』 倉本美津留著
アリー・マントワネット