本島に米軍優先空域 訓練時の一時制限 年千回


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 2010年3月の嘉手納ラプコン返還後も、沖縄本島周辺の航空管制を担う那覇ターミナル管制所で米軍関係者が管制業務に携わり続け、米軍の飛行を想定して設定された空域が存在していることが分かった。琉球新報が9日までに入手した資料によると、民間機はその空域を避けて飛行しており、本島空域で現在も米軍機の運用が優先されている。

航空関係者は「嘉手納ラプコン返還は表面上だけだった」と指摘し、米軍の訓練実施のため「アルトラブ」と呼ばれる一時的な空域制限も年間千回近く発生していることを明らかにした。
 米軍の飛行を想定している空域は「アライバル・セクター」と呼ばれ、米軍機が普天間飛行場や嘉手納基地に着陸する際、米軍関係者の退役軍人が那覇ターミナル管制所で管制業務を実施する。
 アライバル・セクターは米空軍嘉手納基地中心に、北と南にそれぞれ長方形に広がっている。空域は高度約600~1800メートルで、風向きや季節で北と南が入れ代わる。
 この空域の設定により、民間機は那覇空港に発着する際、設定空域下の約300メートル以下の低高度を保たなければならず、事実上米軍機の運用が優先されている。航空関係者は「ラプコンの返還前後も実態は変わっていない」と指摘している。
 国土交通省は管制権は日本側にあるとし、アライバル・セクターについて「(米軍関係者が)訓練の調整をする範囲の目安だ」と説明したが、正確な範囲は明らかにしていない。米軍関係者が常駐している根拠について、同省は「日米地位協定に基づいている」としている。
 一時的に制限区域を設ける「アルトラブ」について、同省は過去に実施されたことは認めた。だが年間回数については「米軍の運用に関わる回答は差し控える」とコメントした。(池田哲平)

<用語>嘉手納ラプコン
 米軍嘉手納基地内にあった進入管制区域で2010年3月、日本側に返還された。同基地から半径約90キロ以内、高度約6千メートル以下の空域と、久米島空港から半径約55キロ以内、高度約1500メートル以下の空域を、レーダー誘導と管制官の指示によって管理していた。「ラプコン」はレーダー・アプローチ・コントロールの略。