「攻撃能力ない輸送機」 専門家、唐突発言を疑問視


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 ウィスラー在沖米四軍調整官がオスプレイを尖閣諸島に派遣する可能性に言及した。尖閣周辺での中国の海洋活動活発化を念頭に置いた発言とみられる。これまでも米政府高官らがしばしば「尖閣は日米安保条約の適用範囲内」などと述べているが、地元司令官の発言は珍しい。だが唐突感も否めず、県幹部からはその真意をいぶかる声が上がった。有事の際の実効性については専門家からも疑問視する見方がある。

 尖閣問題で米国は安保条約5条の適用対象との認識を示す一方、領有権をめぐっては日中両国に中立的立場を保っている。ヘーゲル国防長官は8月、中国の常万全国防相との会談で「米国は領土主権については特定の立場を取らない。これらの主張が平和的に、威圧行為なしに解決されることが米国にとっての利益だ」との見解を示した。
 ウィスラー氏は17日の仲井真弘多知事との会談で、オスプレイの安全性や優位性を強調する中で、尖閣派遣の可能性に言及した。
 県幹部は「(安全性を不安視する県民を)安心させるために持ち出したのかもしれないが、輸送機のオスプレイが尖閣まで飛行できるという話とは別問題ではないか。米国の政治的スタンスからも発言は非現実的に思える」と批判した。
 ウィスラー氏は派遣が必要となる状況など詳細については語っていないが、軍事評論家の前田哲男氏は米国の立場を踏まえ、「攻撃能力のない輸送機のオスプレイが、尖閣問題で必要となる場面が思い浮かばない」と率直に話す。
 その上で高知、滋賀両県で10月にある日米共同訓練への参加など、オスプレイの運用拡大に対する批判を意識した発言ではないかとの見方を示し、「軍事的なリアリティー(現実性)に乏しく、中国脅威論を背景に、尖閣問題を持ち出してオスプレイへの批判を包み込む政治的な狙いを感じる」と語った。
(池田哲平)