進む法整備に懸念 特定秘密保護法案を国会提出


社会
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 政府が国会に提出した特定秘密保護法案は、外交・防衛に関する情報などを特定秘密に指定するとしているが、米軍基地が集中する県内関係者からは特定秘密の範囲が曖昧なまま進む議論に懸念の声も強まっている。

 今年3月、防衛省はそれまで毎年発表していた県内米軍関係者の基地外居住者数について「米国から保安上の懸念が上がった」として公表を中止した。同省は県に「公表不可」を条件に内々の資料提供を打診。だが県が「公表しない理由がない」と回答したところ、資料は提供されなかった。
 基地外居住者数の公表は2008年2月に発生した米兵による女子中学生暴行事件を受けて始まっていたが、防衛省は米側の要望を優先し、県民に具体的な説明のないまま一方的に公表を取りやめた。
 ただこうした措置は、在日米軍の駐留や運用などをめぐって日米両政府が情報公開を制限した一例にすぎず、自衛隊情報が開示されないことも少なくない。
 海上自衛隊那覇基地の対潜水艦戦作戦センター(ASWOC)の建設資料をめぐり1988年に県民が那覇市に情報公開を求めた際、当時の防衛庁は市に非公開を迫り那覇地裁に公開停止を求めて提訴。2001年に最高裁で市の全面勝訴が決まったが、その後自衛隊法改正で防衛秘密の指定権者が首相から防衛相に変更されたことで、秘密の件数は近年増加傾向にある。
 県幹部は基地政策に関して「不利益が出ない場合には原則公開が望ましい」との基本的立場を示す。その上で「法の制定によって情報の縛りが強くなると基地行政への影響が心配される」と懸念を口にした。
 基地の運用に関して地元の頭越しに取り交わされる合意内容は、「国防上の理由」を盾にこれまでも県や市町村に十分に公表されておらず、県民が知り得る情報が今後さらに減少することが懸念される。
 県の又吉進知事公室長は「安全保障を負担している沖縄としては無関心ではいられない」と語り、法整備に向けた議論を注意深く見守る考えを示した。
(池田哲平)