<識者評論>照屋寛之氏(沖国大教授) 民意の重み理解せず


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 こともあろうに県選出議員が国会で辺野古を積極的に推進するだけでなく、反対派の住民運動を「妨害活動」と決めつけ、警察権力を最大動員して弾圧・排除を誘導するような発言をした。残念無念だ。断固排除するように政府に進言するに至っては、県民の代表としての責務を放棄し、国家権力と一緒になって県民の反対運動を弾圧する宣言であり、多くの県民が憤りを禁じ得ないであろう。

 政府関係者でも発言したくてもできないような内容だ。安倍晋三首相らは、「よくぞ言ってくれた」とほくそ笑んだに違いない。住民運動の本質、沖縄の痛み、「沖縄のこころ」を全く解してない発言だ。
 警察、海上保安庁に反対運動を事前に取り締まってほしいようだ。「反対運動即、違法行為」という先入観があるのではないか。県警が「悪質な違法行為であれば厳正に対処するが、表現の自由を強制的に止めることはできない」と述べたことは妥当な判断である。米統治下の沖縄で住民運動によって自治権拡大、主席公選、祖国復帰を実現した歴史を忘れてはならない。
 島尻氏は名護市長が権限で移設を阻止することは「問題行為」との認識である。しかし稲嶺進市長は市長選で移設推進派に4千票余の大差で当選した。政治家として選挙結果、民意の重みを理解しているならば、あのような発言はできないはずだ。
 移設阻止は「権限の乱用」と解しているが、そもそも全国のどこも受け入れない基地を民意を全く無視して強引に押し付けようとしている政府こそ権力の乱用の最たるものである。
 市民・県民の生命、財産を守り、平和な沖縄を創造するために移設に反対することは市長としての責務で、まさしく市長権限の民主的な行使である。地方自治の本旨にのっとり、自治の在り方に魂を入れた勇敢な判断である。(政治学)