米艦、マグロはえ縄の真上航行 被害の船長が証言


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マグロはえ縄漁船「第一寿丸」の近くを航行する米海軍の音響測定艦「インペッカブル」。ケーブルを海中に垂らしているのが確認できる=5月27日、沖縄近海(「第一寿丸」提供)

 県内のマグロ漁船7隻のはえ縄が本島近海で相次いで切断され、米海軍艦艇の関与が疑われている問題で、現場海域で目撃された米海軍の音響測定艦「インペッカブル」がはえ縄が仕掛けられた真上を何度も航行していたことが6日、分かった。

被害に遭った近海鮪漁協所属の「第一寿丸」の男性船長(67)が明らかにした。船長は被害に遭った5月26、27の両日、船体から約800メートル離れた場所を航行していた米艦艇を撮影した。
 はえ縄の切断は5月中旬から今月にかけて、沖縄本島の南西約110キロの海域で相次いで発生した。5月28日時点で7隻15件の被害が確認されていたが、県水産課によると、その後新たに3件が確認され、被害件数は計18件に上る。被害額は数百万円に及ぶとみられる。
 県漁連や県は沖縄防衛局を通して米軍に事実関係を照会しているが、問題発覚から2週間が経過した6日現在も回答はない。一方、在日米軍司令部も本紙の取材に回答していない。
 「第一寿丸」の男性船長は「状況から(米艦艇が)切断したことはほぼ間違いない。米軍は軍事機密を理由に認めないかもしれないが、泣き寝入りするつもりはない。早く補償してほしい」と語った。第一寿丸の被害額は約35万円だった。
 現場海域で目撃された米海軍の音響測定艦「インペッカブル」はたびたび、米海軍ホワイトビーチや那覇軍港への寄港が確認されている。同船は低周波ソナー(音波探知機)を備えており、同ソナーを海中に沈めてえい航し海中調査する。船長は「海中にソナーを垂らして航行するから、それで切っていく。貨物船なども近くを通ることはあるが、海中には影響しない」と話し、「事前に連絡があれば、漁場を変えるなど対処のしようがある」と話した。
 在日米軍を監視する市民団体「リムピース」の頼和太郎さんは、「インペッカブルは、船体から垂直に伸びる発信器と海面とほぼ平行して伸びるパッシブソナー(受信機)の二つのソナーを使用して海中の潜水艦の探知を行う大型の音響測定艦だ」と説明。「はえ縄の近くを航行した際に、パッシブソナーがはえ縄を引っ掛け、切断した可能性が高い」と指摘した。(吉田健一、佐野真慈)
英文へ→Captain of fishing boat strongly suspects U.S. ship involvement in trawl line-cutting