海保、市民へ圧力強化 辺野古海域、相次ぐ拘束


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浮具の内側で抗議行動した市民を取り押さえる海上保安官=26日午前10時20分ごろ、名護市辺野古沖

 名護市辺野古沖の新基地建設をめぐり、海上保安庁による市民排除の動きが強まっている。辺野古海域では連日、カヌーなどで抗議行動をする市民が「安全確保」の名目の下、身柄を一時拘束されている。26日時点で、男性2人が頸椎(けいつい)捻挫などのけがを負うなど延べ19人が身柄を一時拘束された。

しかし、第11管区海上保安本部はけが人が出たことを認めていない。海保の“過剰警備”に市民や弁護士は「むしろ海保が船舶航行の秩序を乱している」と批判を強める。

◆掘削後は軟化

 報道陣が乗る船の進路を海保のゴムボートが妨げる、“取材妨害”も度々確認されている。18日には、記者が乗る船に海保のゴムボートがぎりぎりまで接近し、抗議船から遠ざけようとした。しかし、掘削作業が始まった18日の翌日以降は報道陣に対する対応は軟化。最大19隻配置されていた巡視船も現在は5隻程度だ。
 対照的に、市民の抗議行動に対する締め付けは厳しさを増している。24日には、長島付近の制限区域外を航行していた抗議船に海保のゴムボートが体当たりし、進路を妨害した。船長らに対して、工事海域に近づかないことを約束させる書類を提示し、署名を求める行為も横行。こういった行動は制限区域外でも行われている。
 「とても接近してきて恫喝(どうかつ)のようだった」。抗議船の船長は、海上に出る度に海上保安官の対応に威圧を感じている。船長の牧志治さん(64)は「海保は安全指導と言うが、自分たちの職務に反することをしている」と怒りをあらわにする。

◆排除の根拠

 海上保安庁は辺野古海域での活動について、海上保安庁法第2条に基づいていると説明する。2条では、海上での任務について海難救助、船舶航行の秩序の維持、海上犯罪の予防および鎮圧、船舶交通に関する規制などと明記している。
 抗議活動する市民の行為が、具体的に第2条のどの部分に該当するか、11管本部は「個別的事案にはお答えできない」との見解を繰り返している。
 辺野古埋め立て承認取り消し訴訟の弁護団長を務める池宮城紀夫弁護士は「海上での市民の抗議行動は憲法で保障された表現行為であって、2条に該当する行為ではない。秩序を乱しているわけでも、罪も犯していない。むしろ海保が船舶航行の秩序を乱すなど海上保安庁法に違反している」と指摘。「海保の行動に正当性はなく、職権乱用も甚だしい。国民の目が届かない海でやりたい放題だ」と厳しく批判した。