《夜の海で、いかだやボートにつかまりながら多くの人々が漂流していました。しかし、夜が明けると人の姿は見当たらず、ただ静けさだけが海に広がっていました。23日の昼ごろ、同級生の男の子が流されてしまいました。その日の夕暮れ時、堀川澄子さん(81)らはカツオ漁船の漁師に助けられました》
夜の海は暗く、周りが見えなかった。「お母さーん」「先生」「助けてください」という呼び声や泣き声だけが聞こえた。漂流している時は「寒い」「ひもじい」などと考えることはなかった。
疲れてうとうとすると、錯覚を起こした。護衛艦が助けに来てくれと祈る心が幻聴となって、蒸気船の音が聞こえた。しかし、本当はそうではなく、自分たちは広い海に残され、遠くに無人島が見えるだけだった。
夜が明けると周りは静まりかえっていた。あんなに大勢の人がいたのに見当たらない。この救命ボートでも力尽きて流された人もいた。風が吹いて体は冷え、海に漬かっている部分の方が温かった。家族や友達の顔を思い浮かべ、悲しさと不安が募るばかりだった。
昼ごろ、同じ救命ボートにつかまっていた同級生の男の子が力尽きて海に流された。沖縄に戻ってからもそのことを彼の家族に話すことができなかった。
※続きは8月31日付紙面をご覧ください。