非行、厳しい成育環境 沖縄少年院仮退院46人調査


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生活の程度

 沖縄少年院(沖縄市)を2013年度に仮退院した46人の成育環境を調査分析した結果、65・2%が保護者からの「ネグレクト(養育放棄)」と「放任」、34・8%が「暴力・暴言」を受け、全員が極めて厳しい環境で育ってきたことが明らかになった。

生活保護レベルの貧困家庭が全国平均の2倍強に相当する60・8%を占めるなど、少年非行が家庭の放任や低所得など県内の諸課題と深く関わっている傾向が示された。
 仮退院を審理する法務省九州地方更生保護委員会第3部の委員2人が面接時の資料や面接を基に調査・分析した。那覇第一地方合同庁舎で2日、記者発表した。都道府県単位で少年院の少年たちの成育環境が伺える統計資料が公表されるのは初めて。
 調査項目は保護者との関係や養育環境、暴力の状況、共犯者の有無、学習や登校の状況など25項目。10項目は法務省の矯正統計年報で全国と比較し、15項目は独自にまとめた。
 保護者からの「ネグレクト」と「放任」は30人、「暴力・暴言」は16人。生活保護レベルの貧困家庭に育ったのは60・8%(28人)で全国平均28・8%を2倍強上回った。
 さらに万引や飲酒など初めて非行行為をした年齢が5歳から小6までの間だったのが78・3%(36人)に上るなど、低年齢傾向の実態も示された。
 暴力を振るわれた経験は複数回答で「家庭内」が67・4%(31人)、「遊び仲間」が56・5%(26人)、「地域(の先輩など)不良集団」が47・8%(22人)に上るなど、身近な場で暴力にさらされている実態も浮き彫りになった。
 調査した元コザ児童相談所長の山内優子委員は「貧困を放置すると非行につながることが浮き彫りになった」と指摘した。元中学校校長の津嘉山信行委員は「退院時の少年らは進学などへ希望を持っている」とし、進学支援と雇用の場確保が更生につながると強調した。提言では「貧困・放任・ネグレクト家庭」を福祉につなぐための態勢や、ひとり親世帯への支援の充実など8項目を掲げた。