「無料塾」継続困難に 来年度から国の補助減


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 県内11市町で実施されている生活保護世帯の児童・生徒への無料塾が来年度以降は事業を縮小したり、実施できなくなる懸念が自治体関係者の間で広がっている。国の制度変更で補助率が全額補助から2分の1補助に引き下げられ、自治体負担が増えるためだ。

関係者は「(貧困の連鎖を断ち切る)事業として着実に効果を上げている。続けるためにも国が財源確保をすべきだ」と指摘する。
 琉球新報は事業を実施している県内7市と4町を所管する県に、来年度の事業の見通しを質問した。名護市が補助率の低下を理由に「縮小せざるを得ない」と回答したほか、6市と県は予算編成作業がこれからのため「検討中」「実施に向けて調整」などとしたが、事業実施には「財源確保が課題」などと答えた。
 現在、県内では238人の小中学生が自治体が委託したNPO法人や地元大学が運営する塾に無料で通い、学んでいる。事業費は名護市を除き、国の「緊急雇用創出事業臨時特例基金」を利用している。国が費用の全額(9815万円)を負担しているが、本年度で制度が終了する。
 一方、来年4月からは「生活困窮者支援法」が施行され、生活保護世帯の児童・生徒への学習支援はこの枠組みの中で実施されることが決まっている。
 対象は生活保護世帯だけでなく、生活困窮世帯にも広げられるが、国からの補助は2分の1に減額される。全額補助を受けて事業を実施してきた自治体は来年度以降続けるには新たな財源が必要となる。
 県内自治体は「国庫補助が2分の1になると財源確保がとても厳しい」(沖縄市)、「財源確保が大きな問題。10割補助であれば、事業継続は可能」(糸満市)などと国の全額補助を希望する。
 厚生労働省生活困窮者自立支援室は「重要な事業だから法律に明記し、対象も拡充するとの趣旨を理解してほしい。交付税措置ができないか総務省と交渉したい」と説明している。
 沖縄大学福祉文化学科の島村聡准教授は「扶助費が増大する中、新たな財政出動は難しく、事業をやめる自治体が出てくる可能性は高い」と懸念する。「学習支援は高校進学率が上がるなど成果も出ている。貧困の連鎖から抜けようとする子どもの社会的支援体制ができつつある。国が財源を確保すべきだ」と話した。(玉城江梨子)