<社説>ハリアー機出火 旅客機なら即時飛行停止だ


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 起きてはならない事故がまたしても起きた。しかも、基地周辺住民の生命に危機を及ぼしかねない重大事態だ。4日午後、米海兵隊のAV8Bハリアー攻撃機が米軍嘉手納基地に緊急着陸した直後、タイヤ付近から出火した。米軍や日米両政府はこの事故を軽視してはならない。原因究明まで同型機の飛行を即時中止すべきだ。

 事故機は米ノースカロライナ州チェリーポイント基地の所属で、一時的に嘉手納基地で訓練していた。米海兵隊は「警告灯が点灯したため予防着陸した。出火の原因はホットブレーキ(ブレーキの異常加熱)で、けが人はいない。機体の損傷は限定的」と発表している。
 海兵隊の発表は事故の重大性をことさら矮小(わいしょう)化するような内容であり、到底納得できない。ハリアーは離陸直後に嘉手納基地に引き返しており、機体には多量の燃料が残っていたはずだ。もしも住宅地上空を飛行中に発火すれば大惨事は避けられなかったであろう。
 緊急着陸の理由も明らかになっていない。目撃者によると、離陸直後に旋回し、通常より速い速度で滑走路に進入したという。重大なトラブルが発生したのではないか。海兵隊の発表はこのような疑念に答えず「予防着陸」という言葉であいまいにしている。緊急着陸の理由を含め、県民に対して事故原因を明確に説明すべきだ。
 ことし5月と6月、米国内でハリアーが墜落している。さかのぼれば1999年6月、嘉手納基地でハリアーが離陸に失敗し、滑走路で炎上した。その際、事故原因の説明がないまま訓練が再開された。県民にとってハリアーは生命を脅かす危険な攻撃機である。
 民間の旅客機なら事故直後の飛行再開はあり得ない。現にバッテリー発煙トラブルを起こしたボーイング787は事故原因を究明するために4カ月間も飛行を停止した。乗客・乗員、地上にいる住民の安全を考えれば当然の措置だ。
 軍用機は安全性を度外視してよいという理屈は通用しない。旅客機と同様、少なくとも安全性が確認されるまでは沖縄上空での飛行は許されない。
 仲井真弘多知事は「軍からは事故原因の公表がされにくい。原因がはっきりしない時に(訓練を)再開してしまう」と不満を表明したが、不十分ではないか。県民の生命を守る立場から強い姿勢で飛行停止を米軍に求めるべきだ。