[海保暴力]解説:拘束の根拠説明必要


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 辺野古沖では連日、法的根拠が曖昧なまま、海上保安庁が新基地建設に抗議する市民を強制排除している。

 これまで少なくとも3人がけがを負っているが、本庁も第11管区海上保安本部は取材に対し「把握していない」との回答を続け、現場海域でも拘束した市民に対し、拘束理由などについて説明はなされないままだ。市民やマスコミに十分な説明責任を果たさないことは自らが、脆弱(ぜいじゃく)な法律を基に市民を排除していることの証左だといえ、工事を早急に進めたい政府の思惑もにじむ。
 第11管区海上保安部は尖閣周辺での中国船の領海侵入が常態化して以降、広報体制を強化。24時間体制で報道各社の取材に応じるなど、辺野古に関する広報体制とは真逆の対応を見せており、広報体制の二重基準が浮き彫りになっている。
 海上保安庁は当初、辺野古海域での活動について、海上保安庁法第2条に基づく「安全確保」としていたが、市民が浮具(フロート)の内側に入るなど抗議行動が活発化すると第18条1項を持ち出した。
 第18条1項は、「海上における犯罪がまさに行われようとするのを認めた場合、または天災事変、工作物の損壊、危険物の爆発等危険な事体がある場合」を想定。「人の生命もしくは身体に危険がおよび、または財産に重大な損害が及ぶ恐れがあり、かつ急を要する時」に、海上保安官が、船舶の航路変更や移動、乗組員を下船させることなどができると規定している。
 つまり、市民の抗議行動を「犯罪」行為とみなしているが、逮捕権が行使されたことはなく、説明に矛盾が生じている。
 武器を持たない無抵抗な市民にけがを負わす行為に正当性はなく、暴力行為は許されない。海上保安庁は海上警察権を行使する行政機関として、自らの行為について説明責任を果たす必要がある。(吉田健一)