運命決める権利 行使を 上野千鶴子さん講演


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 社会学者でジェンダー研究の先駆者として知られる東京大名誉教授の上野千鶴子さんの講演会「わたしの未来はわたしが決める―憲法・沖縄・女性―」(琉球新報社主催)が4日、那覇市泉崎の琉球新報ホールで開かれ、約500人が来場した。

女性問題や原発事故、沖縄の基地問題などさまざまなテーマについて、時にはユーモアを交えながら語った。
 上野さんは、今回の県知事選挙について「自分の運命を決める権利を私たちは持っている」と述べ、知事選の結果が来年の全国の統一地方選にも波及し、安倍政権に影響を与える意味を持つと指摘した。
 障がい者当事者として障がい者運動をけん引してきた中西正司さんと上野さんが共著で書いた「当事者主権」という本を事例に出し「障がい者も女性も『私が誰か』を他人によって決められてきた。女性運動は『私のことは私が決める』と自己主張しなければならなかった」と振り返り「沖縄も『沖縄の運命は沖縄抜きで決めないで』って言いたいですよね。自分の運命を決める権利を行使してください」と強調した。
 また、原発と米軍基地問題をめぐっては「つらい現実かもしれないが、沖縄も福島も公共事業や原発抜きでどうやって生きるか、問われていると思う」と述べた。その上で「石川県珠洲市は(原発立地計画に)13年反対していたら、状況が変わり計画の方がなくなった。勝たなくてもいい。抵抗し続けていれば政策や戦略が変わる」と指摘した。
 さらに都議会の「セクハラやじ」の事例を挙げ「恐らくやじを飛ばした側は『これまでも同じことをしてきたのに』と思っているはず。しかし世間の常識、女性の受忍限度が変わった。これは沖縄の基地受け入れに対する受忍限度が変わったのと同じことだろう」と推測した。
 講演を聞いた大学生の玉城愛さん(20)=うるま市=は「基地のことを分かろうとしないのは逃避なんだと気付かされた。どう向き合うかが大事だと思った」と話していた。

原発や基地問題などについて講演する上野千鶴子さん=4日、那覇市泉崎の琉球新報ホール
上野千鶴子さんの講演に聞き入る聴衆=4日、那覇市泉崎の琉球新報ホール