<金口木舌>空手の五輪採用、文化発信の機に


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 野球の競技人口は世界で約3500万人、世界野球ソフトボール連盟に加盟する国・地域は125だ。これだけ愛好者がいるのだから五輪競技復活が待たれるのも当然といえる

▼こちらはどうだろう。世界の競技人口が約4千万人、国際連盟加盟は165の国・地域に上る。ただ残念ながら注目度は野球に及ばない。もちろん五輪競技でもない
▼野球を上回る競技人口が示す通り、沖縄発祥の空手道は世界に普及している。五輪改革の一環として、開催都市提案の種目で採用される可能性も出てきた。沖縄発祥の競技で県勢が世界注目の舞台で活躍する。そんな日が来るのが楽しみだ
▼気掛かりなのは、参加人数の制約があり種目が限られることだ。主流とされる競技空手(組手)だけを採用し、空手の精神性を体現する「形」の実施が見送られては物足りない
▼確かに勝ち負けが分かりやすい組手に比べ、形の優劣は素人目に分かりにくい。だが「相手を攻撃するものでなく、己を守り、高める」という空手本来の精神を競うのであれば、形の実施はぜひとも実現してほしい
▼県が空手会館建設や世界文化遺産への登録を推進する今、五輪直前の合宿地にも沖縄は最適の場所だ。「守礼」「克己」など競技としての勝敗を超えたところに空手文化の神髄はある。五輪採用を沖縄文化を発信する絶好の機会として生かしたい。