改修工事で詳細判明 津嘉山酒造所施設展


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 【名護】国指定重要文化財「津嘉山酒造所施設」(名護市)をテーマにした展示会が20日から名護博物館で始まっている。21日には現在行っている修復に向けた改修工事の報告会があり、文化財建造物保存技術協会(東京)の津嘉山酒造所施設設計監理事務所主任補佐、田村琢(みがく)さんが講師を務めた。

田村さんは本土の建築技術を取り入れている点や母屋と酒造所で資材に格差をつけている点など、工事で判明した構造の特徴などを写真を使い細かく説明。参加者からは多くの質問もあり、関心の高さをうかがわせた。
 津嘉山酒造所施設は1928年ごろの建築で、戦前の建物で操業する県内唯一の酒造所だ。展示会では創業者津嘉山朝保氏の写真やこれまでの経緯などが紹介され、泡盛製造に使用された酒精計や運搬用酒だるといった初期の道具なども並べられている。米軍のパン工場や事務所として使われ、戦火を生き延びた。周囲が焼け野原になる中、ぽつんと立つ空撮の写真もあり、来場者は歴史の重みに触れられる。
 赤瓦木造建築物では首里城に次ぐ規模とされている。昨年7月ごろの麹屋(こうじや)の修復完成に続き、主屋の解体工事が現在本格化しており、その周知を目的に津嘉山酒屋保存の会(岸本林会長)が展示会を企画した。
 初日に見学した玉城時男さん(72)=名護市=は「地元にいても知らないことが多い。津嘉山酒造所の成り立ちなどが分かり、その価値がより理解できた」と話し、修復への期待を寄せた。
 21日の報告会で田村さんは漆喰(しっくい)の壁や浅葱(あさぎ)の壁、段差がある床の間の違い棚などが書院造りの特徴と言い、「本土の建築技術が取り入れられている」と説明。正面の住居は角垂木が使われ、背面の酒造所は丸太垂木が使われるなど格差をつけた構造になっているという。酒造所の解体では玄関が現状よりも大きいことが分かり、「当時、多くの住民が酒を購入していた姿が想像できる」と話した。
 修復完了は2017年ごろを予定。写真などが残る1940年代後半~50年代前半ごろの姿に復元するという。展示会は28日まで。

※田村琢さんの「琢」は真ん中に点

津嘉山酒屋保存の会の岸本林会長(右)の説明に聞き入る見学者ら=20日、名護博物館
報告会で津嘉山酒造所施設設計監理事務所の田村琢さんが説明した