陸軍病院壕の臭い追体験 沖縄戦時を再現、公開 南風原町


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沖縄戦時の壕内の臭いを再現した臭気を嗅ぐ女性=22日、南風原町の沖縄陸軍病院南風原壕群20号前

 【南風原】戦争遺跡「沖縄陸軍病院南風原壕群20号」を平和学習の場として活用する南風原町は26日から、沖縄戦当時の壕内の臭いを再現した臭気を26日から一般公開する。視覚、聴覚に加え、嗅覚による追体験で戦争の記憶の継承に取り組む。同壕で22日、記者発表があり、報道陣に臭いを公開した。当時の陸軍病院壕内の状況を記した手記や証言には「壕内は死臭で…」「鼻を突く悪臭に吐き気をもよおし…」などの様子が語られており、血やうみ、排せつ物などが混じった強烈な臭いだったとされる。

 町は再現に向けて、香りのデザイン研究所(埼玉県)に委託し、8月から調査を開始した。人体や環境に影響のない7種類の香料を使用し、クレゾール液をはじめ、ふん尿や動物性の臭いの香料を混ぜ合わせた。当時の壕内の臭いを記憶する元ひめゆり学徒隊や戦争体験者5人に協力を得て成分を調整した。
 再現に向けた調査を進めた南風原文化センター学芸員の上地克哉さんは「臭いも大切な証言の一つ。戦時中の病院は不衛生な状態だったと感じ取ってもらい、命を学ぶきっかけにしてほしい」と思いを込めた。
 活用については南風原文化センターと壕内を案内する南風原平和ガイドの会が連携し、壕内の暗闇、静寂の追体験に加える形で希望者に臭いを嗅いでもらう。壕見学の申し込みは南風原文化センター(電話)098(889)7399。