華やかなドラマ前面 劇団うない10周年記念公演


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 劇団うない(中曽根律子代表)の10周年記念公演が18日、那覇市のパレット市民劇場で開催された。初代代表の故兼城道子が創作した時代人情歌劇「忍び御門(うじょー)」と故船越義彰作の幻想舞踊劇「針突(はじち)伝説」を兼城とファンにささげた。

女性だけで美しく演じる「うないのカラー」を前面に出し、華やかでドラマチックな舞台を見せた。
 「針突伝説」の主人公アヤ羽(ばに)(棚原由里子)は生まれつき手にある黒い印を嫌っている。だがアヤ羽には龍神(平良冨士子)のお告げを聞く力があり、思いを寄せる青年金真弓(かなまゆみ)(花岡尚子)を美しい悪魔風根(かざに)(平良芽美)から守る。
 船越氏の娘である「琉球芸能鑑賞綾よりの会」の豊岡(船越)こずえ代表は「1899年に法律で入れ墨が禁止され、針突が恥ずかしいものとされた時代もあったが、本来は儀礼や信仰の思いがこもった南島女性の象徴だと思う。『針突伝説』でも最終的に針突をしている女性の清らかさが描かれており、父らしい作品だ」と指摘する。
 芽美は昨年の「夫振岩」とは変わり、どすの利いた声で悪魔を演じた。多彩な音曲と舞踊が休みなく展開され、物語を彩った。
 「忍び御門」は野村大屋(佐和田君枝)の息子金松(中曽根)が城主の娘真鶴金(まぢるがに)(久米ひさ子)と身分違いの恋に落ちる。金松は城に忍び入り、真鶴金が産んだわが子虎松(大城彩花)を連れ去ってしまう。7年後に親子は再会し、金松は真鶴金に虎松を託す。
 中曽根は男の哀愁をにじませ、久米も思いのこもった演技を見せた。「針突―」と同様、女性の歌三線を要所に盛り込み、清らかな声が物語に合った。最後の別れの場は地謡の音が大きくてせりふが聞こえにくいとの意見も聞かれた。
 ほかの出演は兼城米子、佐和田香織、仲里松子ら。地謡は具志幸大、瀬良垣幸男、西門悠雅、澤井毎里子、米増健太、浦崎愛梨、大濱麻未、池間隼人。
 芝居の後継者が不足する中、若手が多いのはうないの強み。だが毎日のように稽古と公演ができる時代ではなく、中曽根は楽観視していない。次の10年に向け、乙姫劇団の流れをくむ芸風が深みを増すことを期待したい。5月24日にも沖縄市民会館で記念公演がある。問い合わせは久米(電話)090(7570)8128。(伊佐尚記)

真鶴金(右、久米ひさ子)に虎松(中央、大城彩花)を託して去る金松(中曽根律子)=18日、那覇市のパレット市民劇場
風根(右、平良芽美)から金真弓(左、花岡尚子)を守るアヤ羽(棚原由里子)