琉球王朝期の海上境界有効 地裁、那覇市主張認める


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 那覇空港の南にある海域の境界線を確認するため、那覇市が豊見城市を相手に起こした訴訟の判決で、28日、那覇地裁の鈴木博裁判長は、那覇市側の主張する琉球王朝時代に定められた「海方切(うみほうぎり)」と呼ばれる海上線を根拠とする境界線を認めた。両市の間で長年、議論が交わされてきた境界線の確定だが、決め手は琉球王朝時代の地図だった。

 訴訟では、那覇市側が1797年ごろに作成された「琉球国惣絵図(そうえず)」で示された海方切は、明治末期に小禄間切に付与された専用漁業権の根拠ともなっており、区分線として有効だと主張。これに対し豊見城市側は、明治政府に移行する時期にはこの海域の海方切は消滅していたなどとして、1903年に土地整理事業によって作成された県土地整理地図に記された境界線が有効だと主張していた。
 判決では那覇市の主張する海方切について「1903年の時点でも海面の占有利用の範囲を定める慣習として存在していた」と判断した。
 豊見城市の主張については、土地整理事業では海面について測量した形跡がなく、整理地図に記された線は「単に瀬長島の帰属を示すものとも考えられる」として退けた。
 73年に国土地理院から那覇市と豊見城村(当時)に境界線の位置確認依頼があったが、両者の主張が異なり、海上境界線は確定されないままだった。
 海域には那覇空港第2滑走路が建設される予定で、供用開始後は国有資産等所在市町村交付金が交付される。滑走路の面積によって金額が決まるため、那覇市の試算によると、どの境界線が採用されるかで年間に最大で約1500万円の差が出る見込みという。
 那覇市企画調整課の仲本達彦課長は「主張が全面的に認められた。妥当な判断だと思う」と話した。豊見城市の宜保晴毅市長は「不服があるので控訴を予定している」とコメントした。
英文へ→District court recognizes Naha City’s claim on sea boundary from Ryukyu Kingdom era