海保馬乗り 国交相「安全のため」 保安官乗り込み船傾く


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抗議船上で、カメラを持つ影山あさ子さん(右から3人目)に馬乗りになる海上保安官。複数の海上保安官を含む乗員が左舷に集まり、船体が左側に傾く=20日午後2時35分、名護市の大浦湾(金良孝矢撮影)

 名護市辺野古への新基地建設に反対する市民の抗議船に乗船していた映画監督の影山あさ子さん(51)が海上保安官に馬乗りされた問題に関し、太田昭宏国土交通相は30日の衆院予算委員会で安全確保の観点を強調した。だが当時、抗議船に海上保安官が乗り込んだため定員を上回り、船が傾いた。「安全確保」名目の行為が逆に船を危険な状態にしており、説明の矛盾が浮き彫りになった。

海保は説明を二転三転させ、一貫性がなく市民らから批判の声が上がる。
 衆院予算委で赤嶺政賢氏(共産)は馬乗りを報じた本紙の記事を配り、過剰警備を問いただした。太田国交相は「写真の見方だろう」と答弁。「(けが人が出ている)事実は確認されていないとの報告を受けている」とした。馬乗りには「動揺する(動く)小型船の縁にいた女性の体を保持するため」と繰り返した。
 だが、抗議船に海上保安官4人が乗り込んだ際、同船に乗っていたのは3人。定員は6人で海保が乗り込んで7人となり、影山さんが座る左側が海面すれすれに傾いた。海保は抗議船の乗員が定員より1人でも多い場合は船長に事情聴取しており、説明と行動に一貫性がない。同船の船長、北上田毅さんは「船が傾き危険な状況だった」と憤った。影山さんは「海保が追い回すから危険な状態になっている」と指摘した。
 これまでの説明も矛盾だらけだ。当初、「かじの船体後部へ通り抜けるために女性をかわした」としていたが馬乗りの前に船体後部にいた。本紙の連続写真を確認した上で27日、「動画とタイミングが違う、と判明した」と釈明したが「女性をかわした」という説明の前に、動画を確認していない姿勢は「その場しのぎ」との指摘も免れない。
 さらに海保は27日、影山さんの「安全確保」をした理由について「女性が転落して船と船の間に挟み込まれ、けがをする恐れがあった」とした。
 だが海上保安官が馬乗りした当時、影山さんが座っていた側に接していた船はなかった。その後、別の抗議船が近づいたが影山さんに馬乗りした後だった。第11管区海上保安本部は30日、本紙の取材に対し「担当者不在で対応できない」とした。
英文へ→Coast Guard officer takes excessive action against female citizen: Japanese government cites safety measurement