コラム「南風」 声で表現する喜び


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 沖縄テレビでは民間放送教育協会の事業の一環で、アナウンサーが小学校で絵本の読み聞かせをする活動をしています。私は開南小学校3年生の教室で絵本を読みました。選んだ本は、獣医と森の動物のやり取りが面白い「アントンせんせい」。9歳には易しすぎるかなという不安もありましたが、みんなキラキラとした瞳をこちらに向け、物語を楽しんでくれたようです。

 私が小学生の時の夢は、実は童話作家になること。それを周囲に明かしたのは、なんとテレビのインタビュー! たしか1年生の時で、どこの局の何の番組だったかは忘れてしまいましたが、学校に取材に来たカメラの前で「松谷みよ子先生や、あまんきみこ先生のような作家になりたいです!」と堂々宣言したのです。当時、両親はオンエアを見て、初めて私の夢を知り、しかもおマセなことに、作者を「先生」と呼んでいることに面食らったと話します。
 物心つくころから絵本が大好きで、父母に読んでもらうのはもちろん、一人で音読をするのも楽しい時間でした。語り部として景色を描いたり、登場人物に気持ちを重ねたりすることが、なんとも快感で! 声で表現する喜びはあの頃に始まり、今の職業に繋(つな)がっているのかもしれません。
 「アントンせんせい」の病院には、喉の調子が悪いニワトリや、あごが外れてしまったワニ、友達が引っ越して元気が出ないヤギなど、いろんな動物たちがやってきます。それぞれの性格や症状によって、出てくる声の高さや大きさ、話す速さは違うもの。この読みきかせをきっかけに、子どもたちにも、声を出して読む楽しさを知ってほしいと思います。
 今は私が子どもたちにマイクを向ける立場となり、夢について聞く機会もあります。いつか「アナウンサーになりたい」と宣言してくれる子に出会えるとうれしいです。
(金城わか菜、沖縄テレビ放送アナウンサー)