『ぼのぼの人生相談』いがらしみきお著


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

ゆるやかに真剣に受け止める

 4コマ漫画『ぼのぼの』、知ってますか? 主人公のラッコぼのぼのと森の仲間たちのゆるーい日常を描いた癒やし系漫画だが、飛び出すせりふがいやに深い。「できないことってのはな、どれくらいできなかったかで決まるんじゃねえよ。どれくらいやりたいかで決まるものさ」みたいに。1986年から今も連載が続く。

 キャラ豊かなぼのぼのと仲間が人生相談に答えた。相談の中身は「口が臭いです」から「過不足のない愛って何ですか」まで。仲間たちはああでもない、こうでもないとゆるやかに、でも真剣に語り合う。そのやりとりの呼吸にこの人生相談の妙味がある。
 周囲を思うあまり恋に踏み切れないシングルマザーの相談にぼのぼのは言う。「ボクさ、悲しい結末になりそうな時ってそんなに悲しい結末にならないと思うんだけど」「おぉ~、ではどんな時に悲しい結末になるのでぃすか」「悲しい結末になるなんて思っていない時」「おぉっ!! なんだかすげい!!」「でも悲しい思いをしないなんて、そんなの恋じゃないよ」
 「本当の自分とは」という悩みにシマリスくんはさらりと答える。「今まで生きてきたこと、それがほんとうの自分なんじゃないかしら」
 作家宇野千代の人生相談は「あなたは~というわけですね」といつも相手の言葉をそのまま繰り返した。相談者が回答者に求めているのは「正解」ではなく、受け止められること。だとすれば、本書ほど優れた人生相談に出会ったことがない。何度も深く心打たれた。
 (竹書房 1500円+税)=片岡義博
(共同通信)
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片岡義博のプロフィル
 かたおか・よしひろ 1962年生まれ。共同通信社文化部記者を経て2007年フリーに。共著に『明日がわかるキーワード年表』。日本の伝統文化の奥深さに驚嘆する日々。歳とったのかな。たかが本、されど本。そのあわいを楽しむレビューをめざし、いざ!

ぼのぼの人生相談 みんな同じなのでぃす
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