新宿歌舞伎町で67年 沖縄料理店「南風」閉店へ


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今月末の閉店を前に「毎晩、三線と歌で盛り上がった」と話す前田清美店主=南風

 【東京】創業67年を数え、東京の沖縄料理店で草分け的存在の新宿歌舞伎町の「南風(なんぷう)」が今月末で閉店することになった。店主の前田清美さん(68)は「体力的にきつくなって、継ぐ人もいない。引き際だと思う」と話す。沖縄出身者の心のよりどころだった老舗が消えることになる。

 南風は戦後の焼け野原だった新宿で前田さんの両親の嘉手納知春さん(本部町出身)、幸子さん(大宜味村出身)夫妻が始めた。苦労して沖縄の食材を得、三線の名手だった知春さんが民謡で客をもてなした。
 一度離れると容易には帰れなかった米統治下の沖縄。沖縄出身者は遠い故郷を思い、南風に通った。知春さんは苦学する若者に食事をさせ、終電後はたびたび店に泊め、「始まりも終わりもない店」と呼ばれた。店の2階に住んでいた清美さん姉弟は朝、寝ている酔客をまたいで登校したという。
 学生時代から60年、南風に通う渡久山長輝東京沖縄県人会長は「おやじから三線を習い、土間で寝たこともある。多くの沖縄人(ウチナーンチュ)の慰めとなった店だった」と懐かしむ。
 清美さんは嘉手納清美として歌手や女優として活躍した後、82年に店主となった。バブルのころは地上げ屋の標的にもなったが店を守り続け、浮き沈みの激しい歌舞伎町の中で、老舗の一つだ。
 清美さんは「毎晩、お客さんが島唄を大合唱し、カチャーシーを舞った。沖縄人が楽しんでくれたから67年も続けられた」と話した。
英文へ→Okinawan Restaurant Nanpu closes after 67 years in Kabuki-Cho