「辺野古工事やめるべき」 ジュゴン研究の向井さん指摘


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海の生き物を守る会代表の向井宏氏

 絶滅危惧種ジュゴンの生態や海草藻場などに詳しい「海の生き物を守る会」代表の向井宏氏(71)=京都府=に6日、名護市辺野古で沖縄防衛局が進める普天間飛行場代替基地建設関連の工事がもたらす影響を尋ねた。

 -昨年8月の海底掘削調査開始後、9月にジュゴンの若い雄が大浦湾で泳いでいたことが防衛局調査で分かった。掘削調査が再開されようとしているが、ジュゴンへの影響は。
 「若い雄は従来、古宇利島海域を主な生息域とする母親と一緒にいたが、自立して古宇利と大浦湾を行き来し、自分の餌場を探すようになった。良好な餌場だった辺野古沖には寄りつかず、もう一つの良い餌場である名護市嘉陽沿岸には別の雄が生息する。今の状態だと若い雄は主生息域ともなり得る大浦湾に近寄れない。工事はやめるべきだ」
 -ジュゴンに適した餌場とは。
 「ジャングサ(ジュゴンの草)が生えていればどこでもいいわけじゃない。ジュゴンは海草を下から掘って食べるため、餌場として適した底質(砂地)の問題がある。若い雄が水深が十数メートルもあって決して餌を食べやすい場所ではない大浦湾にいつも来ることに意味がある。海岸の開発などでほかに良好な餌場がないのだろう。大浦湾を失うと非常に悪影響がある。環境影響評価(アセスメント)の『影響がない』という根拠が分からない」
 -環境アセスで現在3頭いるとされる沖縄のジュゴン群の保全について。
 「沖縄のジュゴン群回復のためには、フィリピンなどよそから流れて来た際に定着できる餌場が残っているかどうかだ。いい餌場を壊すと将来の可能性を壊す。防衛局や環境省は国の特別天然記念物を守る義務がある。環境保全のためには防衛局が事務局を務める環境監視等検討委員会に頼らず、環境省なり沖縄県なりがきちんと監視を行っていくべきだ」
 向井氏は8日午前11時から午後4時まで名護市で「嘉陽海岸砂浜生き物調査」を案内する。参加無料。問い合わせは日本自然保護協会(電話)080(5067)0957、abe@nacsj.or.jp