『唐山大地震』


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

被災者に思いをはせずにいられない
 本来なら2011年3月26日に公開予定だったのだが、東日本大震災が起きて公開延期に。4年を経て、ようやくの公開である。タイトルの唐山大地震とは、1976年に中国・河北省で起こった直下型地震で、実に24万人を越える犠牲者が出た世界最大級の災害である。

 原作小説は2006年に中国で出版されたものだが、その後の08年には、今度は四川で悲劇が起こった。直後にフォン・シャオガン監督は、唐山市から依頼を受けて本作を撮ることになったという。依頼した側には、四川の方たちに唐山の人々の体験を教訓にしてほしいという思いもたぶんにあったはずだ。この映画は中国で大ヒットを記録した。
 確かに冒頭の地震シーンは、都内で震災を体験した筆者ですらフラッシュバックして身震いするほどの恐怖感がある。だが、物語のメーンはある家族の、その後。本作を見ることが中国の人々に何らかの癒やしとなったのであれば、同じ苦い経験をした私たちも思いを共有できると確信する。
 心の傷と向き合うのはつらい。しかも本作の場合、コンクリート壁の下敷きになった2人子供のどちらかしか救えない状況になり、母親の下した決断が、家族を32年間も引き裂くことになるのだ。ずっと悔やんで生きてきた母。弟を選んだ母親をずっと恨んできた娘。両者は再び親子の絆を結べるのか…。この映画を見ながら、震災の被害者に思いをはせずにはいられないだろう。★★★★★(中山治美)

 【データ】
監督:フォン・シャオガン
原作:チャン・リン
出演:シュイ・ファン、チャン・チンチュー、リー・チェン
3月14日(土)から全国公開
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中山治美のプロフィル
 なかやま・はるみ 映画ジャーナリスト。1969年水戸出身。スポーツ紙出身の血が騒ぎ、撮影現場やカンヌ、ベネチアなど映画祭取材に燃える。三池崇史、深作欣二、キム・キドク、アキ・カウリスマキなどひとクセのあるオヤジたちが大好き。
(共同通信)

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中山治美