<社説>バヌアツ被災 先進国に災害深刻化の責任


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 大型サイクロンが南太平洋の島国バヌアツを直撃し、甚大な被害が出ている。これまで確認されている死者は11人だが、バヌアツの人口26万人のうち半数が被災し、同国史上最悪レベルの被害だ。

 バヌアツは大小約80の島から成り、そのうち約60の島に人が住む。船でしか行き来できない島の中には人口100人以下の所もあり、被災状況の確認は遅れ気味だ。被害が拡大しないことを祈りたい。
 地理的に近いオーストラリア、ニュージーランドなどが支援物資の搬送や救助隊を送り出している。日本もシートやマットなど2千万円相当の緊急援助物資を送ると発表し、国際緊急援助隊の先遣隊6人が現地入りした。現地のニーズを早めに把握し、被災者支援と感染症拡大防止など今後の本格的な支援につなげてもらいたい。
 風速は一時83メートルにも達したとみられる。ブロックを積んでトタン屋根を乗せた簡素な造りの住宅は自然の猛威にさらされ、跡形もなくなった。首都ポートビラでは建物の4分の3が損壊したというから、被害のほどが分かる。
 政府庁舎や病院にも被害が出ており、現在は日本の援助で昨年建てられた病院が「全国で唯一の病院」というから医療面への影響も深刻だ。
 当初は人命に相当な被害が出ると懸念された。「重要なことは人々が生き延びたことだ」。ナツマン首相がこう語るように、多くの人たちが学校や教会に避難して難を逃れたことは幸いだった。
 被災者に絶望感を抱かせてはならない。国際社会が連携し、バヌアツの被災者をしっかり支えてもらいたい。
 折しも東日本大震災の被災地となった仙台市では、バヌアツのロンズデール大統領も出席し国連防災世界会議が開かれていた。会議最終日に採択された2015年以降の国際行動指針には、温暖化対策をめぐり、二酸化炭素(CO2)の大排出国が発展途上国よりも大きな責任を負うとして、気候変動枠組み条約を尊重するとの文言が盛り込まれた。
 先進国は自然災害の規模や頻度の深刻化に責任があるといえる。CO2の排出削減はもちろん、途上国の防災インフラや人材育成の支援強化に取り組む必要がある。
 東日本大震災で日本は世界から支援を受けた。今度は、日本がバヌアツに手を差し伸べる番だ。