「隠れた名盤」森昌子『惚れさせ上手』


社会
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間違いなく森昌子の新境地
 通算60作目は、前作『花魁』に続き、作詞:阿木燿子×作曲:宇崎竜童の作品。前作は決めぜりふが特長だったが、この『惚れさせ上手』では歌謡ロック調に、コンビらしさが出ている。

 阿木燿子が描く“情熱的な愛に走る一途な女性”。それを、時にこぶしを効かせ、時に大胆に歌い上げ、演歌とポップスを往来した歌唱が、心中ものを現代に甦らせる。和楽器や弦楽器、さらにエレキが交差する萩田光雄による編曲も効果的。間違いなく森昌子の新境地と言えるだろう。
 カップリングの『道行華』は、ダウン・タウン・ブギウギ・バンドのカバー。『愛傷歌』や『寒椿』などに通じる悲恋系の気品は彼女の真骨頂だ。作家、歌手ともに2曲の振り幅が実に見事。
 昨秋のアルバム『森昌子ベスト15~今、あなたへ~』も絶品。『なみだの桟橋』や『越冬つばめ』など代表作7曲の新録は、女の色気や母の力強さが加わっているのだ。近年の彼女の歌声を聞くと、いつまでも恋をしていたくなるはず。
 (キング・1204円+税)=つのはず誠
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つのはず誠のプロフィル
 つのはず・まこと 1968年生まれ。総合化学会社、音楽宣伝会社勤務を経て、T2U音楽研究所設立。音楽市場分析、コンピレーションCDの企画・選曲などを手がける。
(共同通信)

惚れさせ上手

森昌子『惚れさせ上手』
つのはず誠