<金口木舌>「したい人」すら


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 全国はことしが統一地方選の年。地方紙には4月の人事異動を1カ月遅らせて選挙報道に取り組む社もある。しかしことしは盛り上がらないと記者たちから愚痴が出る。理由は無投票の多さだ

 ▼12日に投開票された41道府県議選は全体の21・9%が無投票で当選した。その数501人。5人に1人以上が有権者の審判を受けていない。人口減や市町村合併、行革などで議員定数は減った。地盤や看板のない新たな人材が出にくい環境に加え、民主党など野党の新人擁立が十分でなかった
 ▼昨年11月の県知事選、12月の衆院選の熱気を体感した身にはピンとこないが、実は沖縄でも離島などで議員のなり手が不足している。昨年の村議選は伊江や伊平屋、中城など5村が無投票だった
 ▼支局勤務時代、村議の多くが60歳以上だった。県内の町村議の報酬月額は18万から23万円台。「子育て世代だと本業を持たないと選挙に出られない」という声も聞いた
 ▼「したい人よりさせたい人」が投票の合言葉だったはずが、「したい人」すら少なくなった。それが投票率の低下という悪循環につながっているのではないか
 ▼生活と最も密着した課題に取り組むのが地方議員の役割。「させたい人材」を地域で探し、リーダーに押し上げる努力も必要だろう。選挙がなくても「お任せ民主主義」から脱却する意識が問われる。