浦添市議会 市長の不信任案否決 西海岸開発絡め判断


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松本哲治浦添市長の不信任決議について審議する浦添市の臨時議会=25日午前、浦添市議会

「公約違反」議論置き去り
 【浦添】松本哲治浦添市長が那覇軍港の受け入れを表明したことは公約違反だとして、浦添市議会の野党議員7人が提出した不信任決議案は、25日に開かれた臨時議会で賛成少数で否決された。しかし、反対した議員の中には「賛成でも反対でもない。議会を混乱させるよりもまずは市長の動向を見る」「公約違反は問題だ。しかし、西海岸開発については浦添市案を推進する市長と立場は同じ。市長の辞任で西海岸開発が滞るのもどうか」と、積極的な反対ではない議員も複数おり、議会から信任を得たとは言い難い。

 不信任案は、松本市長が4月20日、那覇軍港を浦添西海岸に受け入れると表明した記者会見が発端だ。選挙時の公約を撤回した軍港の受け入れ表明は、市民の反発を招いた。
 不信任案を提出した議員は、軍港受け入れの公約違反のほかに給食費の無料化のめどが立っていないこと、自治会や老人会など各種団体への支援を公約で掲げながらも補助金を減額したことなども問題視し、決議文に盛り込んだ。
 現在の議会構成は定数27人のうち与党が16人、野党が11人。不信任案の可決には議員数3分の2以上の出席と4分の3の以上の賛成が必要で、ハードルは高く当初から否決される可能性は大きかった。
 結果的に賛成したのは不信任案を提出した7人と共産党議員2人の計9人にとどまり、与党議員まで広がらなかった。さらに同じ野党のそうぞう2議員は退席した。

◆政策重視
 そうぞうの議員は「公約違反については賛同するが、軍港を受け入れと西海岸の開発を進める政策はある意味一致しており、反対とも賛成とも言い難く退席した」と話す。
 反対した議員の中でもそうぞうの議員と同様に、西海岸開発と絡めて判断した人もいる。ある議員は「市政の混乱で西海岸開発が滞るのは避けたい」とし反対に回った。
 不信任案を提出した野党議員間でも西海岸開発については推進・反対と立場に濃淡はあるが「選挙公約違反は存在意義を問われる重大な問題」という一点で共闘した。与党にその理解は広がらなかった。さらに可決されれば市長は辞任するが、同時に議会を解散することもできる。議員の中には「それほど重い決議に簡単に賛成しかねる」と慎重姿勢で反対した人もいた。

◆議会の姿勢示す
 与党議員の中には、法的拘束力を持たず過半数で可決される「『辞職勧告決議』や『問責決議』でもよかったのでは」という声もあったが「不信任決議」という重い要件でなければ臨時議会招集の請求が難しかった。
 6月定例議会を待たずに、臨時議会を開催してでも不信任決議案を出した背景には「市長の軍港受け入れ表明から2カ月以上議会が何もしないということは、市長を黙認していることになる」と、市民に議会としての姿勢を示すことにあった。
 審議では与党側の反対討論もなく約15分で採決となり、市長の公約破りについての議論は深まらなかった。市民の関心は置き去りにされた。
 臨時議会には40の傍聴席に60人以上の市民が訪れ、中に入れない人もおり、市民の関心の高さがうかがえた。今後市民が市長のリコール(解職請求)運動に立ち上がるかが注目されている。(知花亜美)