きらきらと光る水面に、白い歯をのぞかせた笑顔がよく似合う。県内で唯一人の女性プロボディボーダー・翁長(旧姓=入波平)優子さん(40)は、昨年9月に末期の子宮がんを宣告されたが、家族や友人に支えられ懸命に病と向き合っている。
ボディボードとはサーフィンよりも小さな板に腹ばいになり、回転などを加え踊るように波に乗る競技だ。小柄な風貌からは想像できないほどの大波に挑む姿が印象的な翁長さんは、県内唯一人のプロとして県ボディボード界をけん引してきた。
3人の子宝にも恵まれ、順風満帆だった昨年9月。不正出血と腰痛、腹部の張りがあり、歩けなくなった。「何かおかしい」。総合病院を訪れ、子宮頸(けい)部腺がんと診断された。さらに2週間かけて検査した結果、がんは子宮だけにとどまらず、肺とリンパ節にも転移していた。
1年半前に子宮がん検診を受けた時に異常はなく、体調不良を感じてからも2度違う病院へ行ったが、結果は同じ。不調は続いたが「お医者さんの言うことだから」と疑わなかった。子育てや家事にも追われ、つい自分の体をだました。
抗がん剤を使うか聞かれたが、食事や運動の制限はなかった。「残りの時間を自由に使いなさい」と言われているようだった。淡々と病状を告げる医師を横目に、頭が真っ白になった。
祖母も同じ病だった。「抗がん剤は家族との時間が短くなる」と、自宅療養を決めた。自分なりに体力づくりに励み、食事にも気を付けた。現在も入退院を繰り返す。医師に「今の状態で生きているのが不思議」と言われるが、望みは捨てない。
検査結果が悪く落ち込むこともあるが、家族や友人に励まされ、また生きる希望をもらう。「たくさんの人たちに生かされている」と、感謝の言葉があふれる。
国立がん研究センターによると、沖縄は子宮がんの75歳未満年齢調整死亡率が全国ワースト3位。厚生労働省発表の都道府県別検診受診率は神奈川と並び40位と低い。子宮がんの中には、子宮の内側にできるため早期発見が難しいケースもある。「おかしいと思ったら、無理してでも大きな病院へ行ってほしい」と、翁長さんは話す。
がんを宣告されてから、朝起きると必ず家族に伝える言葉がある。「ありがとう。きょうもいい朝を迎えられたよ」。愛する人たちに支えられ、1分1秒、大切に“いま”を生きている。
(仲本文子)
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闘病中の翁長さんを支えようと、ことし4月に「Co.Co.Ro(ココロ)の会」が発足した。同会は応援メッセージなどを受け付けている。cocoronokai2015@gmail.com