沖国大ヘリ墜落、米軍消防に放射能検査 宜野湾消防には行わず


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 2004年8月に発生した沖縄国際大学の米軍ヘリ墜落事故で、放射性物質「ストロンチウム90」がヘリから飛散したため、米軍が消火活動をした普天間飛行場の救難消防隊員に対して放射能検査を行っていたことが分かった。

ストロンチウム90の飛散は事故から3週間経過しても公表されず、その理由について在沖米海兵隊は「(人体への影響に対する)懸念がなかったので公表が遅れたと思う」と県や宜野湾市に回答していた。一方、現場に最初に到着した市の消防隊員に対しては検査が行われておらず、事故対応をめぐる米軍の矛盾が浮き彫りになった。
 琉球新報が事故から約7カ月の間に行われた海兵隊と県などの会合を記録した宜野湾市の内部資料を情報公開請求で入手して判明した。
 入手したのは04年12月28日と05年3月4日の2回にわたって行われた海兵隊と県や市、沖国大の関係者らによる会合資料。事故現場の土壌調査結果について話し合っており、出席者の質疑応答などが記録されていた。当時の関係者などによると、会合は非公開で行われた。
 資料によると、会合の出席者の質問に対して海兵隊側が回答しているとみられる文言が続く。海兵隊は2回目の会合で「気化したストロンチウムは人体への影響はないと断言できる」と安全性を強調していた。その一方で「消火活動をした隊員は、センサースキャナーで放射能検査を実施したが乗務員は、センサースキャナーでの検査は行ってない」と説明している。
 県への情報公開請求で入手した事故の調査報告書によると、事故当時、市の消防車が現場に最初に到着し、その5分後に普天間飛行場の救難消防隊も駆け付けて消火活動に当たった。同市消防本部によると、当時消火活動に当たった市の隊員は放射能検査を受けておらず、米側から検査の必要性を打診された形跡もない。一方で米軍側は自軍の隊員のみ放射能検査を受けさせていた。
 1回目の会合で土壌調査結果の報告があった際、米国大使館は事故から約20日後になってストロンチウム90が気化したことを発表しており、質問では人体や周辺への影響を懸念する声が相次いだ。
 このうち「公表が遅れた理由は何か。すぐに発表できない訳でもあったのか」という質問に対し、海兵隊側は「人体に影響がある場合だったらすぐに公表したと思う」と回答した。さらに「事故直後は現場も混乱し、優先事項を決めて対応しなければならなかった。そのような懸念がなかったので公表が遅れたと思う」と理由を説明していた。(中里顕、当間詩朗)