KC130移駐1年 負担軽減策に疑問符


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米軍岩国基地に移駐後も普天間飛行場に飛来するKC130空中給油機=2014年11月7日

 KC130空中給油機が昨年8月26日に米軍普天間飛行場から山口県の米軍岩国基地に移駐されてから、1年が過ぎた。県や宜野湾市によると、普天間飛行場では現在も戦闘機などが飛来しており、依然として環境基準を超えた騒音が計測されている。

辺野古新基地建設をめぐる集中協議では政府側が移駐を“実績”として強調したが、県や宜野湾市は「際立った効果は見られていない」としており、負担軽減策の成果には疑問符が付いたままだ。
 移駐は1996年の日米特別行動委員会(SACO)最終報告の合意に基づいて行われ、昨年8月26日に全15機と人員、装備が普天間から岩国に移駐を完了した。しかし移駐された空中給油機が岩国から普天間に飛来する姿がたびたび目撃されてきた。宜野湾市によると、移駐により普天間に常駐するヘリを含む航空機の総機体数は63から48に減少した。
 同市によると、激しい騒音をもたらす戦闘機や大型輸送機などの外来機が飛来しており、人間の聴覚の限界に迫るとされる120デシベル超の騒音値を記録する傾向が空中給油機の移駐後も続いている。また日米による航空機騒音規制措置(騒音防止協定)で運用が制限される午後10時を超えて飛行する米軍機も複数確認されている。
 沖縄防衛局が普天間飛行場周辺で実施している測定結果(速報値)を基に移駐前後の騒音をLden(エルデン、時間帯補正等価騒音レベル)で比較した。それによると移駐前の2013年9月~14年7月、住宅や学校のある宜野湾市大謝名では11カ月の全てで平均の航空機騒音が環境基準(住宅地で57デシベル以下)を上回っていた。移駐完了後の14年9月~15年7月では環境基準超えが6カ月に減少したが、60デシベルを超える月もあり、依然として騒音水準は高い。
 辺野古新基地をめぐる集中協議で、政府側は安倍晋三首相と菅義偉官房長官が共にKC130の移駐を持ち出して基地負担軽減への取り組みを訴えた。しかし地元からは効果に懐疑的な声が根強い。
 県関係者は「形式としては評価できる。しかし代わりに外来機が入っていることもあり、県民の実感につながっていない可能性がある」と指摘する。宜野湾市の担当者も「離発着地点付近の騒音回数は減少しているが、騒音が増えている地域もあり単純に評価できない」としている。
 岩国市の岩国基地対策室は「住民の苦情など目に見える影響は出ていない」としたものの「これ以上の負担増は認められないというのが山口県と岩国市の共通したスタンスだ」としている。(中里顕、当間詩朗)