会場に降りしきる雨が、残忍な事件や悲惨な事故で半世紀余にわたり、犠牲や泣き寝入りを強いられた人々の涙雨に見えて仕方がなかった。北谷町で23日に開かれた「米兵によるあらゆる事件・事故に抗議する県民大会」は、主催者発表で約6000人が集まり、理不尽な基地被害への県民の怒りの大きさを見せつけた。
県民の切なる願いは、憲法がうたう基本的人権が保障され、平穏な暮らしを取り戻したい―そのことに集約されるだろう。広大な基地に万余の米兵が居座る沖縄の現実は、願いから程遠いが、日米両政府は「沖縄の痛み」を正面から受け止め、これを取り除くという責務を果たしてもらいたい。
「治外法権」の現実
沖縄駐留の米兵らに県民が人権を踏みにじられた例は、枚挙にいとまがない。本土復帰後も凶悪な殺人事件をはじめ、粗暴な犯行が後を絶たない。戦闘機やヘリ墜落など大事故の検証もしかりで、今なお「治外法権」の様相だ。
1995年秋、沖縄本島北部で買い物帰りの女児が複数の米兵に拉致され乱暴された痛ましい事件では、くすぶり続けた県民の怒りが爆発した。日米両政府に対し、強く異議を申し立てる過去最大規模の総決起大会が開かれ、安保体制を揺さぶった。
大会あいさつ冒頭で、当時の大田昌秀知事は「行政を預かる者として、本来一番に守るべき幼い少女の尊厳を守れなかったことを心の底からおわびしたい」と謝罪。高校生代表の女生徒は「やりきれない思いで胸がいっぱい。軍隊のない、悲劇のない平和な島を返して」と訴えた。
知事の言葉は本来、日米両政府のトップが真っ先に口にすべきことだろう。少女の尊厳も守れない政治家に国防など論じる資格はないと考えるし、国際社会に対して主権国家だと胸を張れまい。
あれから13年。残念ながら基地沖縄の現実は、さほど変わっていない。米兵らによる事件・事故は相次ぎ、今回の大会開催の契機となった女子中学生暴行事件が起きた。「綱紀粛正」「再発防止」の連呼がむなしく聞こえる。
しかし、あきらめるわけにはいかない。県民は愚直と言われようが、繰り返し、理不尽な現状からの脱却を訴え続ける必要がある。そうしないと、この小さな島は巨大な軍事基地で人権侵害のるつぼと化し、取り返しのつかない状態になってしまうだろう。
今回の県民大会では、4点の要求決議が採択された。米軍優先である日米地位協定の抜本改正、米軍による人権侵害根絶への政府の責任明確化と実効ある行動、厳しい綱紀粛正策と具体的な再発防止策の提示、基地の一層の整理縮小と海兵隊を含む米軍兵力の削減―がそれだ。
民意を見誤る恐れ
これらは県民からすれば極めて当然の要求であり、日米両政府は実現に全力を挙げるべきだ。人権が踏みにじられる状況はこれ以上放置できないし、期限を切って協議してほしい。
心配な点もある。13年前と違い、大会に知事や県議会議長らの姿が見えなかったことだ。仲井真弘多知事は大会2日前になって「契機となった事件の被害者と家族をそっとしておいたらどうか」などと述べ、参加しない考えを表明した。
県議会の仲里利信議長も、自民党県連の不参加決定を受ける形で「超党派でなく、議長としても、一県議としても参加できない」と説明した。
知事や議長の不参加は、返す返すも残念である。今回の大会を野党色が強いと見るなら、与党第一党が参加してこそ、そのイメージも払えるというものだろう。実際には県婦人連や県子ども会育成連絡協など社会教育団体が参加しており、不参加は選挙を控えて勘繰りすぎとの印象が否めない。
いずれにしろ、知事らの不参加は「沖縄は一枚岩ではない」ととられ、日米両政府から見くびられる恐れがある。沖縄から誤ったメッセージを発信してしまう危険性をはらんでおり、今後、知事が訪米して基地問題を訴えても説得力を欠くことになりかねない。
ただ、日米両政府も今回の大会を見くびると、民意を見誤ることになる。基地の重圧は尋常ではない。県民の怒りは沸点に達しており、負担軽減の約束が裏切られたとの思いが充満している。両政府は訴えの一つ一つに耳を傾け、抜本的な解決策を示すべきだ。
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