「集団自決」訴訟で大阪地裁は28日、原告主張を棄却した。争点となった隊長命令の事実について「合理的資料もしくは根拠があると評価できる」と指摘するなど原告側の主張をことごとく退けた判決は、「一部敗訴」も覚悟した被告側を驚かせた。体験者証言に信用を置き、隊長命令の事実について「合理的資料もくしは根拠があると評価できる」との判断は、原告で「隊長命令はなかった」とする元座間味島戦隊長、梅澤裕氏の陳述を参考にした高校歴史教科書の妥当性を問うものとなりそうだ。
判決後、被告・岩波書店の関係者は「両書で主張が認められるとは思わなかった。片方は厳しいと予想した」と率直に語った。関係者が言う「片方」とは家永三郎著「太平洋戦争」のことだ。
■「一部敗訴」も想定
ノーベル賞作家の大江健三郎氏の著作「沖縄ノート」の記述が争われたことが注目された裁判だが、岩波側が敗訴を懸念していたのが「太平洋戦争」だった。事実、岩波側は同書で一部敗訴した時の対処についても検討を進めていた。
「沖縄ノート」には隊長名が記していないが、「太平洋戦争」は梅澤隊長の名を明記していた。しかも、著者の家永氏が2002年に他界したことも被告の立場を難しくした。それに対し、昨年12月の結審後、原告側の徳永信一弁護士は「『沖縄ノート』は分からないが、『太平洋戦争』は勝てる」と予測していた。
「世界」編集長、岡本厚氏は「梅澤氏の名を書いた『太平洋戦争』がどう判断されるか心配だった」と明かし、「集団自決について『日本軍が深く関わった』とし、隊長の関与も『推認できる』とした判決だ」と評価した。
■崩れた検定の根拠
梅澤陳述書のほか元渡嘉敷島戦隊長の赤松嘉次氏の手記、さらに「隊長命令説」を援護法適用の「方便」と主張するために原告が提出した証言などについて裁判所は「疑問がある」などとして信用性を否定。その一方、住民証言を「具体性、迫真性を持ち、信用性がある」と論じている。これまでの沖縄戦研究や沖縄戦体験者の証言の積み重ねが原告側の主張を退けた。大江氏は会見で「証言が裁判に反映した。(証言者に)心から敬意を表したい」と発言。岡本氏も「沖縄の証言なしには勝訴はなかった」と語るなど、住民証言に導かれた勝訴を重く受けとめる。
歴史教育者協議会の石山久男委員長は「今回の裁判は沖縄戦の研究成果を踏まえ、体験者の証言もくみ取られている」と評価した上で、「自決命令の有無では事実認定を避けるとも予想されたが、それを超えた内容だ。特に梅澤氏の陳述書が否定されたことは、昨年の教科書検定を考えても意味が大きい」と話した。
(小那覇安剛)
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