日米地位協定では、日本に駐留する米兵の犯罪について、「公務中」の場合は日本に第1次裁判権がないとされている。「公務」の範囲は明記されていないが、1956年の日米合同委員会でその範囲を「職場の飲酒」にまで拡大し、米側に有利な運用で合意していたことが公文書によって明らかになった。しかもその合意内容は現在も適用されているという。なるほど、米兵犯罪多発の状況が改善されないのも当然である。
公務中か否かというより、今回の問題は日本の裁判権が及ぶか否かと考え直した方が分かりやすい。米側が「職場での飲酒」まで公務中の範囲としたのは、当然ながら日本の立場に配慮したものではない。いかに自国軍に利することができるか腐心した結果である。
対する日本は、強い抵抗も示さず玉虫色の拡大解釈に同意してしまう。そこに国民に対する配慮はない。見えてくるのは、地位協定の運用を第一とした妥協である。
結果、生じせしめたのは犯罪被害者となった国民の悲しみと憤りである。
2005年に東京都八王子市で、小学生ら3人のひき逃げ事件が発生した。逮捕された米兵は「公務中」とされ即日、釈放された。
米側は公文書で、合意後に起きた事件について「公務の内容に関する日本側からの照会が数件あったものの、すべての案件が米側に有利に処理された」とまで示している。
現在、噴出している地位協定の問題は、その不平等性に起因している。これほど米側に配慮された協定であるからこそ、日本国民の不利な状況が際だつのだ。
米兵の犯罪が相次ぎ、日米両政府とも犯罪を根絶する具体策を検討しているように見える。しかし、その背後には、日本側の裁判権の放棄ともいえる秘密の合意事項が隠されていた。要するに、日米両政府の姿勢はポーズにすぎなかったのだ。
真剣に根絶策を検討するのならば、特に日本政府は、このような合意をやり玉に挙げ、米側に破棄を求めるべきである。
ところが日本政府は、米国に対する柔軟な姿勢とは対照的に、地位協定の抜本改定を求める県民らに譲歩する様子は見られず、「地位協定は運用改善で」という方針を決して崩さない。
日米両国の間で、日本国民、とりわけ米軍基地の集中する県民は犠牲を強いられている。米側の恣意(しい)的な裁判権運用を認める日本政府は、その姿勢を改め、地位協定の抜本的な改定を強く主張するべきである。欺かれたと感じている国民の信頼を取り戻すには、米国に対して毅然(きぜん)とした態度を示すしかない。
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