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食品行動計画 消費者保護に政策の転換を2008年7月6日 
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 「業者保護」から「消費者重視」へ―。消費者目線の行政実現へ向けて政府が取り組む約50項目の施策と、その実施時期をまとめた行動計画案の内容が明らかになった。食品全般について流通経路の追跡を可能にするトレーサビリティー(生産履歴)制度を導入する新法を2009年度以降に制定する、などが計画案の柱となっている。
 トレーサビリティー制度では食品事業者に生産、加工、流通、販売記録の保管を義務付ける。これが実現すれば、食品被害が発生した場合に素早い原因の究明が可能となる。また消費者への安全情報の提供も容易だ。いま問題となっている中国産ウナギの産地偽装事件などを見ても、この機能が順調に発揮すれば偽装の防止や背景の解明に大きな力となろう。
 来年度に発足する予定の消費者庁と併せて「車の両輪」となる今回の行動計画案が策定されたのは、消費者にとっては朗報だ。実現に向けて各省庁の積極的な姿勢があれば「静かなる革命」(福田康夫首相)も現実味を帯びてくる。その第一歩として評価したい。
 戦争で疲弊した経済を立て直して国力を回復させようと、戦後の日本は行政主導で多くの企業に優先して資源を注ぎ続けた。その結果、いわゆる「奇跡の復興」を成し遂げたのだ。しかし、その過程で消費者保護の視点が軽視されてきた側面もあったのは事実だろう。水俣病をはじめとする公害事犯、薬害やこのところ目立ってきた食品被害など、いずれも、消費者の利益というより企業の論理を重視した結果と言えなくもない。
 これらの不祥事に関して、行政の怠慢が指摘されてきたことも忘れてはならない。消費者や生活者を主役とする今回の行政の転換の動きも、根底に国民の公務員への信頼が失墜している現状がある。
 だからこそ、計画案にも公務員の意識改革策を盛り込んだ。09年度の消費者庁創設に合わせて全府省庁の設置法を改正し、任務規定に「消費者重視」を明記するとしている。施策を推進していく公務員の側に、こうした意識がなければ、どんな立派な計画も絵に描いたもちに等しいからだ。
 青写真はできた。すべての計画が思惑通りに実現できれば、日本の消費者行政は大きく変わる。とはいえ課題も残る。例えば、トレーサビリティー制度に関しても義務化すれば生産者や事業者にコスト負担が大きくなる。食品が倉庫などで何度で温度管理されたか、さらに農薬などの使用状況なども細かく管理する必要があるからだ。当然、産業界の反発が予想される。
 これらの課題を乗り越え、どう施策を実現するか。行政の側のやる気はむろん福田首相の強い指導力が必要なのは言うまでもない。


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