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布川事件 速やかに再審開始すべき2008年7月17日 
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 強盗殺人罪に問われ無期懲役が確定した元被告の男性2人に東京高裁が再審開始を認める決定をした。殺害方法をめぐる法医学鑑定など新たな証拠の事実調べなどに基づき、高裁は「自白と目撃証言の信用性には重大な疑問がある」と断じた。
 過去の冤罪(えんざい)事件を持ち出すまでもなく、再審の扉をこじ開けるのは至難の業だ。だが司法は有罪の根拠のほころびを認めた。速やかに再審裁判を始めるべきだ。
 元被告が逮捕、起訴された事件は1967年に茨城県利根町布川で起きた。大工の男性が殺害され現金を奪われた事件である。2人は別の事件で逮捕され、殺害と現金強奪を自白したが、公判では一貫して無罪を主張した。しかし78年に最高裁が上告を棄却し有罪が確定した。
 争点は自白の信用性だ。「手で絞めた」とする2人の自白は、被害者宅付近での目撃証言とともに確定判決の柱となった。
 ところが2回目の再審請求となった水戸地裁土浦支部は2005年、弁護団が提出した法医学鑑定などを検討した結果、自白の信用性に疑問を呈し、再審開始を決定した。殺害行為では東京高裁も土浦支部と同様「手ではなく何かで首を絞めた可能性が高い」と判断した。
 検察が主張した2人の自白内容に対し、地裁と高裁が「客観的事実に合致しない」と結論付けたのである。犯人だけが知り得る秘密の暴露も認めなかった。自白偏重の捜査の在り方に警鐘を鳴らしたものと受け止めるべきだ。
 高裁は、検察が証拠として出した警察の取り調べ段階の自白テープについても、録音中断の痕跡を理由に退けた。逆に取調官の誘導の可能性さえ指摘した。
 これだけの矛盾点が露呈した以上、検察は最高裁に特別抗告すべきではない。
 来年は裁判員制度が始まる。裁判員のよりどころは市民の良識だ。不慣れな裁判員に判断材料を提供する意味でも、事件にかかわる資料は公正に開示され、かつオープンであるべきだ。取り調べの可視化はそのひとつである。


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