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2008年7月19日

 フランスの詩人ヴィリエ・ド・リラダンはギリシャ王権継承を主張できるほどの大貴族に生まれた。すっかり落ちぶれ、赤貧洗うがごとき生活を送るが、その分、強烈な自負心を研ぎ澄ませた
▼ホームレスの群れにうち交じり、橋の下で夜を明かしながらこう言い放った。「たまには地球という一遊星のことも考えてやろうよ」
▼山之口貘(ばく)の詩を読むとこの逸話を思い出す。窮乏ぶりが似ているのではない。「地球の上はみんな鮪(まぐろ)なのだ」(「鮪に鰯(いわし)」)と宇宙のどこかから地球を眺める視点。洋の東西を問わず、本物の詩人なら魂が軽々と地球をはみだしてしまうのだ
▼リラダンほどむき出しではないが、唯一無二の詩を生み出す者という誇りも読み取れる。「あれを読んだか/これを読んだかと/さんざん無学にされてしまった揚句(あげく)/ぼくはその人にいった/しかしヴァレリーさんでも/ぼくのなんぞ/読んでない筈(はず)だ」(「博学と無学」)
▼「貘君によって人は、生きることを訂正される」。処女詩集に寄せた金子光晴の序文だ。人の根っこを揺さぶるその詩の本質を言い当てている
▼格差社会と言われる現代、「だれよりも貧乏したのに、心は王侯のごとしという、ふしぎな豊かさ」(茨木のり子)を身に付けた「精神の貴族」の作品はもっと読み返されていい。貘が世を去ってきょうで45年。


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