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研究者のためのアメリカ国立公文書館徹底ガイド2008年7月20日 
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 政府の説明責任を、次の世代へ時間と費用をかけて保障するのが、公文書館である。民主主義の成熟度は、公文書館で閲覧できる情報の質と量に比例するとでもいえよう。公文書館へ足を運び、政府の作成した文書(公文書と呼ばれる)を数多く閲覧できれば、その国の民主主義ぶりが進んでいるといえるだろうか。
 確かに公開される情報量は目安だが、政府の所有するすべての情報の公開を原則とすることが最も重要だ。逆にいうと、公文書を公開しない理由が明らかにされ、たとえ非開示とされても、必要に応じて公開が進む仕組みが不可欠だ。政権にとって不都合な情報が隠されることが多々あるからだ。
 大切なのは当時の政権担当者を批判することではなく、われわれ自身の歩んできた道を可能な限り知ることが、よりよい未来を切り開くための不可欠な作業だからだ。公開される公文書は、今の世代から次世代にむけた説明責任なのだ。
 自ら「アメリカン・デモクラシー」を標榜(ひょうぼう)する米国が、80年ほど前に創設した国立の公文書館の利用方法を紹介するのが、本書だ。いわば、民主主義の成熟度を直接に体験し、評価を下す機会へと導いてくれる。
 とはいえ、難しい議論を本書は展開しない。きわめて実用的な構成だ。宿をどこに取るのかや公文書館への交通手段に始まり、公文書館のドアを開いてから閲覧者が直面する手順を丁寧に説明する。公文書館を経験しなければ知りえないテクニカルな役立つ情報が満載だ。
 重要なのは手始めに調査を開始すべき資料リストの基本が紹介されていることだ。日本にいてこれらのリストを眺めていても実感がわかないだろうが、公文書館の閲覧室では強力な水先案内人だ。
 こうした公文書館ガイドが日本語で出版された背景に、著者の仲本和彦さんの努力はいうまでもないが、米国の情報公開と民主主義への信頼ぶりがある。もちろん、米国にも公開されていない公文書があるのも忘れてはならない。また、日本にとって不都合でも米国の利益を脅かさなければ公開される。
 米国立公文書館で「助っ人」力を発揮する本書だけど、館内持ちこみは1冊まで。重要なことは事前にメモにして、1階入り口で「持ち込みスタンプ」をもらってから閲覧室へ進んで。
(我部政明・琉球大学教授)


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