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<811>肥満クライシスとの戦い 減量手術は最終手段2008年7月29日  このエントリーをはてなブックマークに追加 Yahoo!ブックマークに登録

 地球上ではいまだ飢えに苦しむ人が多くいます。しかし、一方で肥満人口も爆発的に増加しています。
 世界では17億人が過体重であるといわれています。米国では成人の3分の2にあたる9700万人が肥満、1100万人が高度の肥満(病的肥満)、そして年間50万人が肥満関連で死亡しています。
 肥満は遺伝的な素因と環境の要素(摂取カロリーの増加と運動不足)などが絡んで発症します。適切な食生活と適度な運動をすれば問題なく減量できそうですが、簡単でないことは周知の通りです。
 特に高度肥満では、食事療法や運動療法などの内科的治療は95%以上が失敗に終わるといわれています。一時的に10キログラム以上減量することは可能ですが、多くの場合リバウンドしてしまいます。
 高度肥満は、糖尿病、狭心症、心筋梗塞(こうそく)、睡眠時無呼吸症候群、ぜんそく、高脂血症、胆石、逆流性食道炎、脂肪肝、がん、関節症、精神疾患などを伴うことも多くあります。肥満ではない人に比べ、死亡リスクは2倍で、余命を5年から20年縮めるといわれています。肥満に関連した医療費も、米国では年間1170億ドルと大きな経済損失となっています。
 このような状況で、世界的に減量手術が数多く行われるようになってきました。この手術は1950年代に始められましたが、腹腔(ふっくう)鏡手術の発展で、腹部を大きく切開することなく、手術が可能になりました。それも相まって、90年代より爆発的に増加し、米国では現在年間18万件も行われています。
 減量手術は誰でも受けられるわけではありません。ありとあらゆる努力をしたにもかかわらず、失敗に終わった患者さんのうち、生命予後が極めて不良であると判断されたときのみ、適応となります。
 多くの場合、手術による減量効果は確実で、糖尿病や高血圧など肥満に関連する合併症の治癒率も高くなります。しかし、手術合併症も皆無ではなく、生涯にわたる栄養管理も必要ですので、この治療はあくまでも最終手段として行われるべきです。
 日本の肥満人口の割合は先進諸国の中では最低ですが、ここ沖縄においては例外です。特に若い男性では2人に1人が肥満という米国に近い統計結果が出ています。それに伴い、糖尿病の増加も著しく、死亡率も全国平均を上回りました。もはやこの危機的状況を無視することはできません。
 肥満のまん延を阻止するために、すべての県民、行政、そして医療関係者が危機感をもってあらゆる努力を継続していかなくては、この戦いに勝利することはできないでしょう。
 この美しい癒やしの島、長寿の島が、肥満手術の島とならないよう祈るばかりです。
(稲嶺 進、中頭病院)


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