支援者らに「大江・岩波勝訴 控訴棄却」の垂れ幕を持って判決を報告する被告・岩波書店側の関係者=31日午後2時すぎ、大阪高裁前
【大阪】沖縄戦中、座間味・渡嘉敷両島で起きた「集団自決」(強制集団死)をめぐり、両島に駐留していた日本軍の戦隊長が住民に自決を命じたとの記述は誤りだとして、座間味島元戦隊長の梅澤裕氏や、渡嘉敷島戦隊長の故赤松嘉次氏の弟の秀一氏が「沖縄ノート」著者の作家大江健三郎氏と版元の岩波書店に出版差し止めなどを求めた訴訟の控訴審判決が31日午後、大阪高裁であった。小田耕治裁判長は請求を全面的に棄却した一審・大阪地裁判決を支持し、梅澤氏側の訴えを退けた。原告は判決を不服とし上告する。
控訴審判決は、両戦隊長の自決命令の事実を否定せず、真実相当性を認めた一審判決を踏襲し出版継続による不法行為を否定。梅澤氏らに対する重大な不利益は認められないと判断した。さらに、憲法が規定する「表現の自由」に配慮、真実性や真実相当性が出版時点で認められた書籍による不法行為の要件に言及。記述の真実性を揺るがす新資料が提示されたとしても「内容が真実でないことが明白」などの段階に至らなければ、出版継続による不法行為があったとは言えないとの判断を初めて示した。
座間味、渡嘉敷両島の「集団自決」について、日本軍の深い関与を認める一方、両島戦隊長の直接的な自決命令に関して「真実性の証明があるとは言えない」と述べた。その上で戦隊長による自決命令は書籍出版時には「学会の通説だった」とし、大江氏らが隊長命令を信じる相当の理由があったと判断。「後に発刊された資料などで隊長命令は揺らいだが、隊長命令の事実が真実でないと明白になったとまでは言えない」と指摘した。
梅澤氏側が新たに提出した隊長命令を否定する住民証言については「虚言と断じざるを得ない」とした。
<控訴審の判決骨子>
・一審同様、元戦隊長らの請求を棄却する
・集団自決への軍関与は否定できないが、戦隊長の直接命令の事実は断定できない
・出版当時、記述に真実相当性が認められ、出版継続は不法行為に当たらない
・出版継続で元戦隊長らが重大な不利益を受けたとは認められない
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