沖縄戦時に座間味・渡嘉敷両島で起きた「集団自決」(強制集団死)に旧日本軍はどう関与したかなどをめぐる史実論争に再び司法判断が示された。
沖縄戦体験者の証言をはじめ歴史研究の積み重ねなどを踏まえた妥当な判決だ。結論を導く筋道が分かりやすい。歴史的事象に対する客観性や普遍性に主眼を置いた解釈、明快な論理展開で言論・出版の自由へ踏み込んだことも特筆される。
訴えていたのは、座間味島に駐留していた同島元戦隊長の梅澤裕氏、渡嘉敷島戦隊長の故赤松嘉次氏の遺族で、戦隊長が住民に自決を命じたとの記述は誤りだとして「沖縄ノート」の著者・大江健三郎氏と版元の岩波書店に出版差し止めや慰謝料などを求めていた。
大阪高裁の小田耕治裁判長は原告請求を全面的に棄却した一審・大阪地裁判決を支持し、元戦隊長側の控訴を退けた。
地裁判決では両島での「集団自決」を、元戦隊長が自決命令を発したか断定できないとしたものの、日本軍の関与を認め、両戦隊長の関与は「十分に推認できる」と断じた。
小田裁判長は「軍官民共生共死」の一体化に言及。「総体としての日本軍の強制ないし命令と評価する見解もあり得る」とした。惨劇で肉親らを失った遺族らの証言に沿っており、沖縄戦研究の蓄積とも合致する解釈だろう。
注目したいのは、名誉侵害と言論の自由とのかかわりを述べた点だ。名誉侵害を主張する者は「新しい資料の出現ごとに争いを蒸し返せる」とし、著者へのこれらの負担は「結局は言論を萎縮させることにつながる恐れがある」と指摘した。
高裁が大多数の県民にほぼ共通の理解と認識に立って、司法判断を下した意味は重い。
判決は、同時に私たちに沖縄戦史実を継承し、新たな事実を掘り起こすなど地道な努力を促したとは言えないか。一人一人が歴史と正しく向き合うきっかけにしたい。
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