重大事件の刑事裁判に国民が参加する「裁判員制度」が刻一刻と迫っている。来年5月のスタートまで半年足らずだ。各地裁の裁判員候補者名簿に載ったことを知らせる通知書が一括発送され、早い地域だときょうにも通知書が手元に届く。
プロの裁判官が加わるとはいえ、有罪か無罪かだけでなく、最高刑で死刑の選択肢もある量刑判断を迫られる裁判だ。新制度のことはこれまで幾度か耳にし、心の準備を整え、そして頭の中では分かっていたつもりでも、実際に通知を手にしてみて別の実感を抱いているのかもしれない。
「裁判」という文字のいかつさに戸惑い、責任の重さに不安や圧迫感を覚える人が少なからずいることは想像に難くない。
法曹界には無用な混乱、トラブルを防ぎ、理解を得るための努力や不安を和らげる手だてを尽くしてほしい。さらに実施までの作業過程で見直すべき点がないか、間断なく検証することが必要だ。
今回、候補者名簿に載ったのは全国で約29万5000人、352人に1人の確率だ。県内の候補者は約2000人で、529人に1人の割合となる。
名簿に記載された人たちに届く通知書には、質問票付きの調査票が同封される。質問票では警察官など裁判員の資格がない職業に該当するかどうか、重い病気などで参加が困難かどうか尋ねる項目もある。70歳以上や学生は希望すれば辞退が認められる。
国民目線や市民感覚を裁判に反映させるというのが裁判員制度の理念だ。しかし、環境整備や国民の理解が不十分だとして廃止や導入の延期を求める声は弁護士会内部にもある。9割程度の裁判が5日以内に終結する短期集中審理が、被告人の権利を損なうことへの危惧(きぐ)や、厳罰化が加速するといった懸念からだ。
候補者を辞退の理由探しに走らせるか、制度の趣旨に共鳴し積極参加を促せるかは、一に法曹界の努力や対応にかかっている。
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