<名物ときわ湯廃業の危機>なじみの客と言葉を交わす兼島さん(右)=糸満市糸満のときわ湯
「久しぶりだね」「寒くなってきたら湯船が一番」―。1952年に創業し、日本最南端の老舗銭湯ときわ湯(糸満市糸満)を切り盛りする兼島景助さん(93)=糸満市=と、なじみ客が温かい会話を交わす。戦後は沖縄に300軒ほどあったといわれる銭湯だが、保健所で確認しているのは現在6軒。57年の歴史を誇るときわ湯も、今年から始まる区画整理で廃業の瀬戸際にある。利用者からは地域の交流の場がなくなると惜しみ、存続を願う声も上がっている。
ときわ湯には、家に風呂がある人も「ゆんたく」したさに朝から集まる。家庭的な雰囲気と地下からくみ上げる水質の良さを目当てに中城村から車で通う客もいるほど。
40年近くときわ湯に通う上原ヨシさん(82)=糸満市=は「家にお風呂はあるが、一人で入るのは危ないのでここに来る。銭湯に来ると兼島さんやたくさんの友達とゆんたくできうれしい」と話す。
開店準備でボイラーに火を入れるのが兼島さんの1日の仕事の始まり。午前10時から番台に座り、空いた時間に薪(まき)用の廃材を切り分ける作業を、定休日の月曜以外は欠かさず行う。
ときわ湯は、前代表で兼島さんの義兄照屋孚栄さんが64年に亡くなった際、兼島さんが買い取り、県外に行っていた6人の子どもたちの協力で支払った。長男景一さん(67)=東京都=は、明治大学在学中に沖縄から送られたチョコレートや缶詰をアメ横の路上で販売し支払いに充てた。
ときわ湯は、区画整理で前を通る道路が二車線となるため、廃業せざるを得ない。常連客からは「市長でも県知事にでも陳情に行くよ。ときわ湯を絶対残したい」と、存続を望む声も上がる。兼島さんは「銭湯が必要だと来てくれる人がいる限り続ける。体力が続くまでここで銭湯を続けたい」と笑顔を見せた。
(大城幸多)
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