かつて「夫婦げんかは犬も食わぬ」といわれた。
広辞苑には「夫婦げんかは一時的で、すぐに和合するものだから、他人が仲裁に入るのは愚かである」との注釈がある。
「けんか」が牧歌的な印象すら受ける。警察も「民事不介入」の原則から仲裁には消極的だった。
ところが、実際には夫婦げんかで生命を奪われるケースも増えてきた。争いは「一時的」ではなくなり、断続的、継続的に繰り返される。
たちが悪いのは家庭内という密室で、近親者間で行われるため、顕在化しにくいことだ。
犬も食わないどころか、警察が積極的に介入しなければ被害が拡大するケースすら出ている。
夫婦げんかを含め、配偶者や元配偶者、内縁関係や元内縁関係者らからの暴力(DV=ドメスティックバイオレンス)が、県内でも増加に歯止めが効かない。
県警の調査では、2008年中に県警に寄せられた県内のDV相談件数は550件と前年比22件増となった。
うち、保護命令発令で被害者を保護したケースも79件と、前年比34件増の倍近い増加だ。
相談件数増の背景には「広報啓発活動でDVが犯罪との意識が芽生え、我慢している人が相談するようになった」との見方もある。
そうであれば、まだ潜在化し続けている暴力の存在も見逃せない。
悲しいのは、暴力のきっかけだ。多くが「些細(ささい)なこと」(47件)が原因。しかも、その7割以上が「飲酒」絡みだ。「飲まなければ良い人」が被害者の寛容を生み、見えない犯罪を繰り返させる要因ともなっている。
「飲酒運転」が重罪のように、「飲酒暴力」も重罪だ。酒に寛容な時代はもう終わった。
DV被害は深刻だ。「傷害」で44件、「暴行」で23件が摘発されている。摘発総数は82件にも上る。暴行という「身体的な虐待」は、比較的顕在化しやすいが、どう喝や無視、ののしりなど「言葉の暴力」による精神的虐待も問題だ。
性交の強要などの「性的虐待」、生活費を入れず無計画な借金を繰り返すなどの「経済的暴力」、外出禁止や通信の制限など「社会的隔離」といった「見えない、見えにくい暴力」の被害もある。
DVの顕在化、撲滅策について、もっと真剣に取り組みたい。
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