「はじめに結論ありき」と首をかしげざるを得ない。厚生労働省が発表した、公的年金の向こう約100年間の将来試算のことだ。
現役世代の収入に比べた厚生年金の給付水準は、厚労省が基本とするケースで2038年から2105年まで、50・1%という。09年度比較で2割の目減りだ。
04年の年金改革で政府が国民に約束した給付水準(50%)は守りますよ、と言わんばかりである。
手放しで喜べないのは、試算の前提となる条件があまりに甘いと言わざるを得ないことだ。
将来の経済指標と合計特殊出生率について、9通りのケースで給付水準を計算した。出生率は5年前に比べて厳しく見ているというものの、賃金上昇率の見通しは08年実績の0・3%を大きく上回る2・5%(前回2・1%)。
155兆円という積立金の運用利回りを前回目標の3・2%より高めの4・1%に設定した。
賃金と運用利回りの伸びを高めに設定すれば、結果が高く出るのは当然のことだ。特に巨額の積立金の運用利回りをどう設定するかで、財政への影響は大きい。
厚労省は「諸外国と比べても経済前提は常識的な水準」と言い、長期見通しを立てる際は経済が順調に回復するとの前提に立つのは自然なこと―と強気だ。
日本経済は昨秋来、深刻な不況と雇用不安が続き、いまだ底が見えない。加えて08年度上半期の公的年金積立金の運用赤字は約3兆円といわれる。
いずれにしても今後100年間の見通しで、実際にどうなるか分からない。現実を直視しない楽観的な試算では、国民の納得を得るのは厳しいのではないか。
厚労省は、今国会に公的年金の一階部分に当たる基礎年金の国庫負担割合を現行36・5%から2分の1に引き上げる法案を提出している。この負担割合がこの先も据え置かれた場合、国民年金の積立金は27年度に枯渇するとの試算もまとめた。
とかく年金をめぐっては、政党や国会議員の有志、経済界、労働界などからさまざまな改革案が提案されている。行き着く課題は財源をどう確保するかだろう。
目減りする給付水準にどう歯止めをかけるか。国民が安心できる老後を守るためにも、政治力が問われている。超党派の取り組みを早急に始めることが必要だろう。
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