金口木舌 RSSicon

2009年3月2日

 「高くて固い壁と、それにぶつかって壊れる卵」―先月中旬、イスラエルの文学賞「エルサレム賞」の受賞講演で村上春樹さんが語った。新嘉手納爆音訴訟の控訴審判決文を読んで、この言葉を思い出した
▼「壁」と「卵」とは、イスラエルによるパレスチナ自治区ガザへの無差別攻撃の暗喩(あんゆ)。「爆弾、戦車、ロケット弾、白リン弾は高い壁です。これらによって押しつぶされ、焼かれ、銃撃を受ける非武装の市民たちが卵」
▼これを控訴審判決に置き換えると、「壁」とは、夜間飛行差し止めについて「司法的救済の道が閉ざされている」と判断回避した司法の「壁」であり、抜本的な騒音規制策をとらない政治の「壁」だ。「卵」とは半世紀以上も爆音被害と事故の恐怖にさらされる住民にほかならない
▼村上さんは、高くて堅固な「壁」を「制度」と名付ける。私たちを守るはずの「制度」は、時に自己増殖して私たちを食い物にする
▼「卵」は一人一人のことで「壊れやすい殻の中に入った個性的でかけがえのない心を持っている」。「壁=制度」は痛みを感じないだろうが、押しつぶされる「卵」は常に苦痛が伴う
▼新嘉手納爆音訴訟の原告団は控訴審判決を不服として飛行差し止めを求め上告する。高い「壁=制度」に立ち向かうのは賠償獲得という「金の問題」ではない。切実な思いをぶつけたいからだ。


次の記事:グアム協定県外移転と相いれな...>>
アイコン 今日の記事一覧 アイコン 今月の記事一覧 アイコン 最近の人気記事


関連すると思われる記事

powered by weblio


PR

金口木舌一覧


過去の記事を見る場合はこちらをクリックするか、 ページ右上のサイト内検索をご利用ください。