ずさんな運営体制を敷いていた福祉施設。監視の目を光らすべき行政は実態を十分に把握できていない。分かっていても有効な手を打たない。
貧弱な高齢者福祉をいいことに福祉の理念を脇に追いやる「貧困ビジネス」の影もちらつく。これでは悲劇を防げるわけがない。
群馬県渋川市の老人施設「たまゆら」で火災が発生し、入所者のうち10人が亡くなった。痛ましい限りだ。一酸化炭素中毒や全身やけどなどで犠牲になった入所者は、体が不自由で認知症の人も少なくなかった。
突然の深夜の火災に恐れおののき、火と煙から逃げたい一心で身構えても体の自由がきかない。恐怖と絶望の淵(ふち)で亡くなったことを思うと悲しすぎる。
これまで長崎県や神奈川県などのグループホームで複数の犠牲者を出す火災事故が起きるなど、社会的弱者を襲った悲劇が後を絶たない。
高齢化社会はますます進展する。このような悲劇は、いつどこで起きてもおかしくない。「対岸の火事」視すべきでない。
今回の火災の原因究明をはじめ、施設の防火設備、避難訓練の実施などの体制面を含め警察と消防には徹底した検証を求めたい。
「たまゆら」の運営は、住居の提供や食事のサービスなど有料老人ホームに近かった。しかし法律で義務付けられている都道府県への届け出はされていなかった。
さらに消化器はあったが、スプリンクラーや火災報知機などの防火設備は整っていなかったようだ。
火災など非常事態に際し、迅速な行動を取れない高齢者であるからこそ、万全を期さなければならない。
今回の事故が暗たんたる気持ちを増幅させるのは、入所者の大半が自治体を介して「たまゆら」に送られてきたことだ。生活保護者である。
施設運営の多くは、東京都墨田区から入所者へ支給された生活保護費で賄われていた。区の担当者は無届けの事実を知っていた。その時点で群馬県などと相談し、改善策を取ることができなかったものか。
厚生労働省は無届け高齢者施設の緊急点検を各都道府県に要請した。点検の結果、何が不足し、どう改めるべきかが明らかになり次第早急に対策を打つべきだ。
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