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「痴漢」逆転無罪 重い課題ばかりが残った2009年4月16日  このエントリーを含むはてなブックマーク Yahoo!ブックマークに登録 twitterに投稿する

 電車内の痴漢事件で、最高裁が逆転無罪を言い渡した。審理の在り方を示す異例の判決だ。供述証拠に頼る捜査や裁判の危うさに警鐘を鳴らした形だが、望ましい方向は示しきれていない。後味の悪さと重い課題ばかりが残った。
 痴漢をめぐる「冤罪(えんざい)」が大きな社会問題とされて久しい。審理の在り方は問われてしかるべきだ。捜査や裁判の当事者は省みて、より判断に慎重を期し、冤罪をなくす一層の努力が求められる。
 同時に、社会的背景があることを踏まえたい。痴漢被害が後を絶たない要因に、首都圏の超異常ともいえる満員電車が一向に解消されない状況があるが、このことは裁判であまり触れられない。
 それだと「木を見て森を見ず」の論議にもなりかねず、この種の事件を一掃できまい。痴漢被害をどう食い止めるか、鉄道会社や行政の責任も問われている。
 訴訟の事件は2006年、東京・小田急線の車内で起きた。女子高生に痴漢をしたとして、防衛医大教授が強制わいせつの罪に問われた。教授は一貫して無罪を主張したが、1、2審判決は懲役1年10月の実刑を言い渡していた。
 上告審では一転し「被害に関する供述には疑いの余地がある」と判断。1、2審判決を破棄し、逆転無罪となった。
 判決を受け、教授は「初めて胸のすく思い」と涙した。一方で「人の一生を何だと思っているのか」とも話し、裁判の在り方に怒りをぶつけた。疑いは晴れても、人生が大きく狂わされたとの思いは残るだろう。
 被害を受けたと主張する女性もしかり。今回の判決には納得がいくまい。供述の不自然さから「疑わしきは被告の利益に」との刑事裁判の鉄則を貫かれたが、「虚偽の供述をした」とのレッテルを張られかねず、心身ともに深い傷を負うことになる。
 こうした状況を招いた司法当局の責任は重大だ。ぬれぎぬで人生を狂わすことがあってはならないし、真の被害者の泣き寝入りも防がねばならない。容易ではないが、人権擁護に立脚して道筋を示すしかない。
 加えて乗車環境の改善だ。身動きの取れない満員電車が放置状態にあるのはおかしい。女性専用車両の導入例はあるが、十分ではない。状態を解消し、安心して乗れる環境をつくってもらいたい。


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