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『武士猿』 沖縄空手の本質描く2009年5月31日  このエントリーをはてなブックマークに追加 Yahoo!ブックマークに登録

 最強の沖縄空手家・本部朝基(もとぶちょうき)(1870―1944)の半生を描いた武道小説だ。2008年1月から10月まで、本紙夕刊で連載した。連載開始にあたり、今野敏氏は「ナイチャーが沖縄の空手家の話を、しかも沖縄の新聞で連載するというのでかなり緊張しています。でも、琉球の古流空手を通して培われた私の沖縄に対する愛情は誰にも負けないと自負しております」とコメントを寄せた。
 連載当初は読者から「沖縄の方言や文化を違和感なく書いてくれるか」と懸念する声もあった。しかし、回を重ねるごとに「明日の新聞が待ち遠しい」という激励の声が増え、連載終了後は「残念。なぜ終わるんだ」「気が抜けたようだ」と惜しむ声が多く寄せられた。「ぜひ本に」という声も数多く、待望の出版といえる。
 主人公の本部朝基は、本部御殿の三男として、那覇市首里に生まれた。空手の大家・糸洲安恒に師事し「手(ティー)」の才能を開花させる。修行のため行った野試合の「掛け試し」で不敗を誇り、その身軽さから「本部の猿(サールー)」とも呼ばれた。
 闘う相手も個性輝く猛者ばかり。北谷に伝わるクーシャンクーの使い手、棒の伊良波長春、女性ながらめっぽう強い運天ナビー…。たまたま京都でボクシング対柔道の興行試合を見て、飛び入りで参加した朝基が相手のロシア人ボクサーを一撃で倒す様は圧巻だ。薩摩藩に支配された琉球の悲哀を背景に、格闘技エンターテインメントとしても楽しめる。
 作者の今野氏も沖縄の空手を30年近く続け、自ら「空手道今野塾」を主宰する武道家である。「空手の本質は沖縄にしかない」といってはばからず、県内空手家との親交も深い。
 空手を本土に広めた船越義珍を描いた前作の「義珍の拳(けん)」。そして「武士猿(ブサーザールー)」。義珍と朝基。対照的な沖縄空手のヒーローを描きながら、今野氏は沖縄空手への愛情を込めた。楽しみながら空手の本質を知ることのできる本だ。空手ファンだけでなく多くの人に読んでほしい。
(宜保靖・文化部)

武士猿
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