脳死を「人の死」とみなし、年齢制限を撤廃し、本人の意思表示がなくても家族の同意で臓器提供を可能とする臓器移植法改正案(A案)が、衆院で賛成多数で可決された。
同案は上程された4案のうち脳死判定の条件が最も緩やかだ。成立により移植推進への期待が高まるが、脳死を「人の死」とみなすことの是非を含め、参院での論議は曲折がありそうだ。
現行法は臓器提供に本人の書面同意を義務付け、同意の意思能力を有する15歳以上としている。
衆院可決のA案は、家族の同意があれば提供を可能とし15歳以上の年齢制限も撤廃する。成立すれば小児の臓器移植も可能となり、15歳以上を含め臓器提供の大幅な増加が期待される。国内で移植を待ち望む関係者にとって朗報だ。
現行法の移植の条件が厳しいため、1997年の法施行後の国内での移植例は81件にとどまる。
このため国外で移植手術を受ける患者が多いのが実情だ。
だが国際移植学会が昨年、渡航移植の禁止を宣言し、世界保健機関(WHO)も海外での移植に厳しい姿勢を打ち出している。
海外での移植が困難になることも予想され、臓器移植患者団体や移植学会が法改正を訴え、条件が緩やかなA案支持を表明していた。
衆院の採決で各党は「個々の死生観にかかわる問題」として党議拘束をかけず、議員の判断に委ねた。共産党は投票を棄権した。
衆院の多数意見がA案を支持したのは、患者団体の「海外での移植は絶望的。患者が生きる道を」との訴えを率直に受け止め、移植推進のコンセンサスが広がったものであろう。
一方、現行法が本人の「書面同意」の条件を付し、「臓器を移植する場合」に限って脳死を人の死とするのに対し、改正案は事実上、「脳死を人の死」とみなすものだ。
衆院の採決で、A案への賛成263票に対し、反対も167票に上った。国会の論戦でも「脳死は人の死という考えは国民的な合意は得られていない」と、真っ向から反対する意見もあった。
移植法案は命の在り方、死生観をも問うている。移植を待ち望む患者の声に耳を傾けつつも、国民の間のコンセンサスづくりに向け、参院の審議では一層の論議を尽くしたい。
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